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2019.11.03 [イベントレポート]
「戦争を初期の状態で止めないと、多くの人が苦しみ悲しむことになる、それを伝えることがこの映画制作の使命だと思いました」11/2(土):Q&A『アトランティス』

アトランティス

©2019 TIFF 10/30のQ&Aに登壇したヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ監督(左)とアンドリー・リマルークさん(右)

 
11/2(土)コンペティション『アトランティス』上映後、ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチさん(監督/脚本/撮影監督/編集/プロデューサー)、アンドリー・リマルークさん(俳優)をお迎えし、Q&Aが行われました。
⇒作品詳細
 
ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ監督(以下、監督):皆様、どうもありがとうございます。また、このような大きな映画祭のコンペティション部門において私たちの作品を選んでくださり、どうもありがとうございました。
このアジア地域におきまして、私たちの今回の作品が上映されるのは初めてとなります。その機会をいただいたことに、心より感謝申し上げます。私たちにとっては人生において非常に素晴らしい可能性をいただけたことに感謝申し上げます。
観客の皆様、おそらく私共の作品をご覧になって多くの質問を持たれたかと思います。それらの質問に喜んでお答えしたいと思いますので、本日はよろしくお願いいたします。
 
アンドリー・リマルークさん:皆様、こんばんは。私、主役を務めましたアンドリーです。ちょうど2週間程前に私は戦争の現場に仕事として入っておりまして、戦争のいろんな場面を実際にこの目で見てまいりました。
この作品を今回上映させていただき、皆様にお伝えしたいメッセージがございます。一つは、ウクライナでは残念ながらいまだに戦争の状態が続いているということ。そして二つ目のメッセージは、戦争の相手国であるロシアは日本人の皆様にとっても隣国であります。すなわち、ロシア政府が掲げている帝国主義的な、拡大政策主義的な方向性が我々ウクライナだけではなく、もしかしたら日本のほうにも向くことになるかもしれない。そういったこともお伝えできればと思います。
 
Q:今回の映画で、画面の構成や撮影の手法はどのように組み上げていかれたのかを教えてください。
 
監督:私が映画の撮影の際に使う手法をご紹介しますが、これは不変的なものではなくて、他の人に共通することのない私個人のものだと思っています。私自身、映画製作の道をドキュメンタリー映画から始めた人間ですので、私にとってはその登場人物一人ひとりが抱えているバックグラウンド、事実、そしてどこかで使うような撮影の場所、そういったものすべてが必要な要素となっております。
ですので、画面の構成に関しましても、撮影を進めるにつれてどんどん変わっていきました。大体70%から80%くらいは当初のシナリオから変更されたと思います。
撮影は大きなカットで撮られていることに、皆さんお気づきになられたかと思います。背景もまた、シーンにとって非常に重要です。すなわち、登場人物のシーンをアップで撮り、その表情を捉えるよりも、その背景が私たちに情報として与えてくれるものも重要だと私は考えております。
また、付け加えると、私の作品では実際に戦争を経験したことがある人をキャストとして使いました。なぜなら、戦争の実体験をもっている人たちの方がプロの俳優さんたちよりも素晴らしい演技をみせてくれると思ったからです。ですので、監督である私にとっては、彼らが、すなわち戦争の実体験者が自分たちの経験を私たちと共有してくれることが重要だと思っています。そして、私が書くシナリオ、ストーリーが彼らの実体験に矛盾しないような形であることが重要です。
撮影に関しては、基本的に長回しの手法を用いました。3分から5分、長いものでは8分に及ぶようなロングカットのシーンをたくさん使いました。このような形はドキュメンタリー映画で使われるような手法です。今回の作品はいわゆるフィクションではありますけれども、ドキュメンタリー映画の作風も取り入れたことになります。
それぞれのシーンが、リアルなものを表現していくと思っています。そのシーンを見ていただければ、それが理解していただけるのではないかと思います。
 
Q:劇中に出てきた、戦死者の検証を行うボランティア団体についての質問です。エンドロールの中で「ブラックチューリップ(Black Tulip)」という名前が出てきました。実際にその団体が存在して、劇中と同じような活動をしている、という理解でよろしいでしょうか。
なぜ「ブラックチューリップ」なのか、日本からどんな支援ができるか、ということについて、ぜひお伺いしたいと思います。

 
監督:ご指摘のとおり「ブラックチューリップ」という名前の組織は存在しております。
このような遺体を発掘する活動は昔から行われていて、ウクライナでは第二次世界大戦のときからありましたし、アフガニスタン戦争の時にも活動していました。200名の死亡者、300名の負傷者という統計もあります。
このような戦死者の発掘作業を、今回この作品を撮影することができたのも、この「ブラックチューリップ」という実在する組織の皆さまのサポートのおかげです。
今ロシアとウクライナ東部で行われている継続中の戦争によって、消息を絶ってしまった、すなわち地面の中に埋まっているであろうと思われるウクライナ人の数は300名程といわれています。
日本の方々が何かサポートをしていただけるということは大変ありがたいと思います。どのような具体的なサポートができるかにつきましては、「ブラックチューリップ」というこの団体がインターネットで情報を出していますので、それをご覧になっていただければよろしいのではないかと思います。
 
司会:矢田部PD:ありがとうございます。監督はこのあと、今日の深夜便での帰国で、ここから空港に直行されるということです。日本を離れる前に最後のお言葉を頂戴して、Q&Aを締めたいと思います。監督、お願いします。
 
監督:ご来場の皆さま、本日は私たちの映画を観にいらしてくださって、本当にありがとうございました。また、大変多くの興味深い質問をしてくださいましたこともあわせて御礼申し上げます。
私たちがなぜこの作品を撮ったのかということについて、もう一度お話させていただきたいと思います。
それは、私たちの国ウクライナでは今もなお戦争が行われているということを全世界の皆様に向けてリマインドしたかったからです。同時に、戦争というものがどのような結末を迎えるのか、どういった影響を及ぼすことになるのかということもお見せしたいと思いました。
例えば、対ロシアの戦争に関しては、ウクライナ東部や、かつてはバルト沿岸地域でも行われました。戦争を初期の状態で止めないと、多くの人が苦しみ悲しむことになる、そういったことを私たちは伝えたいと思い、それを私たちの使命として今回の作品を撮影した次第です。

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