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2019.11.03 [イベントレポート]
「ロケ地のアイルランドでは使った税金の32%が戻る制度がありました」11/2(土):Q&A『人生、区切りの旅』
©2019 TIFF

 
11/2(土)ユース TIFFティーンズ『人生、区切りの旅』上映後、エルヴァル・ アダルステインズさん(監督/プロデューサー)をお迎えし、Q&Aが行われました。
⇒作品詳細
 
エルヴァル・アダルステインズ監督(以下、監督):国際映画祭に招待いただきありがとうと申したいと思います。東京は初めてで、この3日間東京を歩きまわりました。今日も皆さんにこんなに映画を観ていただいて、感謝しています。いつでも新しい国や地域に行くのは、とても興味深くいいものです。
 
矢田部PD:監督のアイディアを脚本家の方が書かれたのか、あるいは脚本家のスクリプトがあってそれを監督が映画化することになったのか、プロセスをお教えいただけますか。
 
監督:脚本とストーリーは脚本家のマイケル・アルムブルスターが全て考えたのですが、彼が草稿を書いて、1回脚本を書いて済むかなと思ったのですが、なんと6回も書き直して、脚本が出来上がるまでに1年掛かりました。私は個人的に知っているロケ地なども入れたかったので、結局彼と最初に出会ってから作品が出来上がるまでに5年間掛かりました。
 
矢田部PD:まず父と息子の物語があったのか、あるいは、ロードムービーというジャンルに親子の物語を加えていったのでしょうか。
 
監督:最初に親子の話がありました。ロードムービーはその設定です。最初は、親と子は別々の考え、別々の哲学を待っているんですけれども、それが近づいていくという話です。私自身非常に伝統的な家庭に育ちました。祖母と祖父に育てらたんですが、自分にも4人子供がいてそのうち3人息子がいるんです。ですから、親と子、両方の視点で描きたいなと思いました。
 
矢田部PD:物語を作るにあたって難しかった、時間が掛かってしまった要素はなんでしょう。
 
監督:いい質問をありがとうございます。二人の話なんですけれど、主にお父さん(フランク)の話をしたかったんです。彼の気持ちの変遷がとても興味深いのでそうしたいと思いました。それと同時に世代を超越した映画にしたいとも思っていました。エンディングについては、話し合って編集の段階でああいう風にしなければいけないと思いつきました。
 
Q:ジョン・ホークスさんを採用したポイントと彼とのお仕事はどうだったか教えてください。
 
監督:ジョン・ホークスさんは性格俳優で本当に何でも出来る俳優なんです。怖い役をされていることが多いのですけれどソフトな役柄をされたこともあって『セッションズ』という映画では体に障害を持った役で、顔だけで演技をされていました。また『LOW DOWN ロウダウン』という映画ではヘロイン中毒で娘を育てている役でしたので、彼はこの役にぴったりだと思ってキャスティングしました。脚本を送ったらすぐに気に入ってくださって、素晴らしい友達にもなれて、これからも友達でいてくれることを望んでいるんですけれど、本当に協力してくださいました。今回東京には他の撮影の為に来られなかったんですけれど。35年のキャリアのある素晴らしい俳優さんです。
 
矢田部PD:35年のキャリアがある俳優さんがしっかり役の準備をしてきた場合、少し若い監督だとイメージが違ったときになかなか意見も言いづらいかと思いますが、監督がNGを出したりしたことなどありましたでしょうか。
 
監督:そうですね、ぶつかることもあったんですけど、準備に時間をかけて脚本も見て、何故こうなっているのかをとことんまで話し合いました。核の部分まで話し合ってカメラの前で答えを出すというプロセスを踏みました。意見の違いがあったら3番目、4番目、5番目のやり方を探り探りやって、そういう準備、リハーサルをする過程で信頼関係を築きました。そういう信頼関係というのが監督と俳優の間に必要だと思います。
 
矢田部PD:息子役のローガン・ラーマンさんも有名な期待の俳優さんだと思いますが、彼のキャスティングについてもお伺いできますか。
 
監督:ローガン・ラーマンさんは若いんですけど、『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』にも出演していましたし、キャリアは長いんです。年の割にとっても大人で、この映画の為にジムに通って体重を7~8キロ増やしてくれました。彼とは撮影に入る3ヶ月前から週に1回スカイプで話し合ったりしていまして、会った時には気心の知れている間柄になっていました。彼は脚本から外れることもあったんですけど、私にとっては大体いい感じでした。ジョエル役のサラ・ボルジャーさんもとってもやりやすい方で歌声が素晴らしくて、映画の中で歌ってるのも、後からの吹き替えはなく、本当の素晴らしい歌声です。それぞれが異なる個性を持っていて、素晴らしかったですね。
 
Q:葬儀で火葬という手段をとられるんですけど、土葬が多いと思っていたんですが、火葬にした理由はなんですか。
 
監督:ヨーロッパでも今では火葬も普通になっていて全体の1/3位は火葬になっています。アメリカでも普通になってきています。自分の身近な人を灰にして暖炉の上など身近に置いたり、庭にまいたりしています。ここでは火葬ということがキーになりますのでそうしました。
 
Q:雨の多いアイルランドでのシーンなどで苦労されたことはありますか。あと鹿とぶつかったシーンは本当にぶつかったのでしょうか。
 
監督:おっしゃる通りアイルランドは本当に雨がよく降るんですが、私たちはラッキーなことに撮影の時は常に晴れで、部屋の中の撮影の時に降っていましたので、誰かが見守ってくれているみたいでした。
鹿はCGがぶつかっているんですけど、鹿自体は本物のアイルランドの鹿で、訓練された鹿でした。
 
矢田部PD:この映画は世界のどこを舞台にしてもあり得たんだと思うんですけど、ロケ地をアイルランドの湖に決めた理由を教えていただけますか。
 
監督:ロケ地をアイルランドにした理由は2つあって、アイルランドは大変は歴史を持っているんですけど、それでも皆さんお酒を飲んで幸せそうにしているというのがあって、そこが良かったという点と、使った税金が32%戻ってくるっていう制度がありまして、その制度を使いましたし、地元のサポートもありました。また英国の映画もアイルランドで撮られてる物が多いので、スタッフもプロフェッショナルな方も多いのでアイルランドで撮ってよかったと思っています。
 
矢田部PD:32%ってすごいですね。日本の制作者にも教えたいと思います(笑)

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