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2019.11.04 [イベントレポート]
「映画を作って、こうして皆さんと話すことで新しい発見があることがうれしい」11/3(日):Q&A『人生、区切りの旅』

人生、区切りの旅

©2019 TIFF 11/2上映時のQ&Aに登壇時のエルヴァル・ アダルステインズ監督

 
11/3(日)ユース TIFFティーンズ『人生、区切りの旅』上映後、エルヴァル・ アダルステインズさん(監督/プロデューサー)をお迎えし、Q&Aが行われました。
⇒作品詳細
 
エルヴァル・アダルステインズ監督(以下、監督):東京国際映画祭にお招きいただいて、そして、このように歓迎していていただいて、本当にありがとうございます。今日この上映を観に来てくださった皆さんも本当にありがとうございます。
東京に何日かいますけれど、本当に素晴らしい街で、歩いていてもとても楽しいです。あと、車がクラクションを全然鳴らさないのでびっくりしました。
 
司会:2012年第25回のコンペティション部門の『メイジーの知ったこと』(公開タイトル『メイジーの瞳』)でも、プロデュ―サーとして関わっています。
映画の世界でいろいろな経験を積まれていますが、長編一本目を撮られて、苦労したこと、充実したことなどをお伺いしたいと思います。

 
監督:プロデューサーとしては、監督をサポートする立場としていろいろな作品に関わらせていただきましたが、監督になることも目標にしていたことの一つでした。そして、この作品にも非常に素晴らしいプロデューサーが関わっていただいてありがたいと思っています。
すごく難しかった部分としては、やはり資金を得るところでしょうか。始めの予算も限られていますし、資金を集めるのがまず一番難しかったと思います。
一番充実していたという部分としては、素晴らしいキャストに恵まれたことです。名優のジョン・ホークスとローガン・ラーマン、サラ・ボルジャーの皆さんが出演してくださったことが非常に嬉しかったです。
 
Q:主人公の名前は意識して付けられたんでしょうか。いつも青い洋服を着ていて、日本では青い色は幸せを表したりすると思いますが、このキャラクターは決して幸せではありません。その辺は意識していらしたのでしょうか。
 
監督:非常にいい質問です。素晴らしい観察だと思います。
実は意識してはいなかったのです。映画を作って、こうやって皆さんと話すことで新しいことを教えていただけて、逆に非常にありがたいです。
青という色については、アメリカを含め西洋では少し意味が違うと思うんですけれども、幸せっていう意味があることについてもぜひ覚えておいて今後に活かせればと思います。
 
Q:ロードムービーということで、ロケーション、どこを旅するかが重要かと思いますが、その背景などをお聞かせ願います。
 
監督:まず最初に、海外を旅させようというのは最初に決めていました。
アイルランドとアメリカには、1900年代初頭に数多く(のアイルランド人)がアメリカに来たという歴史があるので選んでみました。
アイルランドというのは本当にいろいろなことが起きた歴史にも関わらず、笑顔でみんないっぱい飲んで、とても温かい国民性を持っているんですね。ただ、そういったことが実際に行ってみると、主人公にとっては居心地が悪いというか、逆にちょっと怖いというか。そういう状況になっているところが、この映画のロケーションとして完璧なのではないかと思ってアイルランドを選びました。
そして、技術的なことでいうと、素晴らしいクルーがいました。さらに、税制面での優遇などのインセンティブなところもあって、アイルランドを選びました。
主人公が内にこもっていたところから、段々と外に出ていくところを表現したいと思っていました。この旅を通じて、解放されたことを表せたらと思いました。
 
Q:初めての長編映画で、父親と息子の関係をテーマに選ばれたのはなぜでしょうか?
 
監督:私自身は祖父母に育てられたので、直接父親に育てられた経験はないですけれど、4人子供がいまして、子育てをする中で父とは何かということをかなり考えさせられました。
心理的な要素を映画の中に入れたいというのがあったので、核となる関係として、父親と息子の少しこじれた関係が非常に面白いと思ったのです。
このプロジェクトには5年くらい費やしたのですが、非常に価値があると考えました。
 
司会:私から一つ、キャストについてお伺いします。皆さんもご存じのように、ハリウッドでも大活躍しているローガン・ラーマンさんと個性的で演技派のジョン・ホークスさんとが今回キャスティングされています。
彼らはこの映画で十分魅力を発揮していますが、今回お付き合いされて、監督が俳優としてどういった魅力がお二人にはあると思われたでしょうか。

 
監督:二人とも非常に素晴らしい俳優さんなんですけれども、演技へのアプロ―チは少し違うのかなと思いました。
ジョンの方がどちらかというとセンシティブなところがあると思うんです。それに対してローガンは自由にいろいろ試してみたいタイプでした。ただ、その違いが上手く合わさって演技に活かされていました。そして、両者とも、とてもプロフェッショナルだとすごく感じました。
そして、映画が始まる前に少し時間を取って皆さんで会って、今後やる難しいパートについてだとかいろいろ話す時間がありました。そういった時間があったからこそ、映画でもみんなで一緒に働くことができましたし、映画が終わった後も非常にいい関係だったと思います。
もう一つ、サラ・ボルジャーさんについても言っておかなくちゃいけません。彼女は素晴らしい声の持ち主です。彼女が歌ったシーンは、ダビングなどは一切使っていなくて、その場で歌ったものです。
 
司会:あんなに素晴らしい声の持ち主だということは、最初は知らなかったってことですよね。
 
監督:みんな聞いてとてもびっくりしました(笑)
 
Q:監督が影響を受けた監督や映画作品、もしくは好きな監督や作品を教えてください。
 
監督:いっぱいいて、いつも答えるのが難しいのですけれども、あえて挙げるとすると、監督ではロバート・アルトマン監督、シドニー・ルメット監督。あとイングリット・バーグマンさん。彼女からは皆が影響を受けているのではないかと思います。
あと、アイスランドで映画の父と呼ばれているフリドリック・トール・フリドリクソンさんです。彼は非常によい友人なんです。『ミッシング・エンジェル/春にして君を想う』という映画がオスカーにもノミネートされました。
そういった自分が影響受けた監督や作品から意識的に何かを盗むわけではないですけれど、作品を作るうえでかなり影響を受けているのではないかなと思います。
それから、『東京物語』(小津安二郎監督)も大好きですよ(笑)

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