複雑な家庭事情の14歳の少女の葛藤と成長を描く
第32回東京国際映画祭「日本映画スプラッシュ」部門に出品された『
テイクオーバーゾーン』が11月4日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映された。舞台挨拶には、山嵜晋平監督、出演俳優の吉名莉瑠、内田 慈、川瀬陽太、森山 瑛が揃った。
山嵜監督は「暑い時期に撮って大変な映画でしたが、こうして(出演した)皆さんと一緒に立つことができ、とても嬉しいです」と挨拶。主演の吉名は「とても暑い時期の撮影で1日1日がすごく濃くて、撮影自体は楽しい思い出ばかりでした。この役と向き合うのは本当に大変でしたが、自分にとって良い経験となりました」と手応えを語った。
母親、父親をそれぞれ演じた内田と川瀬は、「主人公の母親としてというより、ひとりの人間、ひとりの女性として彼女と向き合うことを大切にして演じました」(内田)、「撮影時からそれほど時間が経っていないのですが、吉名さん、森山君に今日会ったら、ふたりとも成長している。あの時にしか撮れなかった瞬間が写っています」(川瀬)と若い世代について言及した。主役のボーイフレンド役の森山は「僕にとって初めての映画で緊張することもありましたが、先輩方が優しく支えてくれました」と初出演の感想を話した。
本作は、第2回ジュブナイル脚本大賞受賞シナリオを映画化。中学校の陸上部を舞台に、複雑な家庭事情の14歳の少女の葛藤と成長を描いている。撮影は山嵜監督の出身地である奈良で行われた。複雑な背景を持つ思春期の少女を演じた吉名について山嵜監督は「器用な子ではないと思いましたが、嘘がないとも思いました。この映画に関してはそれが全てで、等身大が写っていれば成功するのだろうと思いながら撮っていました」と語る。内田は「自分の年齢とか立場を抜きにして彼女と向き合うことになったのは、彼女がむき出しで獣のような生々しい感情でぶつかってきてくれたから」と称賛の声を寄せた。
また、上映後に行われたQ&Aでは、主人公が仲違いしていた父親の元に走っていく印象的なシーンについて、ワンテイクで撮了としたことを明かした。
第32回東京国際映画祭は、11月5日まで開催。