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2019.11.02 [イベントレポート]
「この映画は時代が変化した時期のモンゴル草原の人々の暮らしに、できるだけ忠実に作った映画です。」11/1(金):Q&A コンペティション『チャクトゥとサルラ』

チャクトゥとサルラ

©2019 TIFF
10/31のQ&A登壇時のワン・ルイ監督、ジリムトゥさん(俳優)、タナさん(女優)

11/1(金)コンペティション『チャクトゥとサルラ』上映後、ワン・ルイ監督(左)、ジリムトゥさん(俳優・中央)、タナさん(女優・右)、イリチさん(俳優・画像なし)をお迎えし、Q&Aが行われました。
⇒作品詳細
 
矢田部PD(司会):友達役で出演のイリチさん、サルラ役のタナさん、チャクトゥ役のジリムトゥさん、そして、ワン・ルイ監督です。どうぞ。監督、皆様、本当にこの素晴らしく美しい、心が本当に洗われるような大画面、皆さんご堪能いただいたと思いますけど、作品を東京に持ってきてくださいまして、心の底から感謝申し上げます。まず皆様から一言ずつご挨拶のお言葉をちょうだいいただけるでしょうか。
 
ワン・ルイ監督(以下:監督):皆さんこんにちは、監督のワン・ルイです。こうして、ここで皆様にお目にかかれることができて、本当にうれしいです。ありがとうございます
 
矢田部PD:ジリムトゥさん、お願いします。
 
ジリムトゥさん:ジリムトゥと申します。こうして皆さんとお目にかかれて、とてもうれしいです。ありがとうございます。
 
矢田部PD:タナさん、お願いします。
 
タナさん:タナです。こうやってお目にかかれて、本当にうれしいです。
 
矢田部PD:イリチさん、お願いします。
 
イリチさん:皆さんこんにちは、今回ですね。東京国際映画祭にお招きいただいてとても皆さんとお会いすることができて本当に光栄です。イリチと申します。よろしくお願いします。ありがとうございます。
 
Q:主人公の住んでいる場所について。
 
監督:モンゴルの、元々伝統的なパオ、今はゲルと言いますが、ゲルのある草原ですね。そこに暮らしているわけですけれども、元々は遊牧民ですので、ゲルを移動させつつ遊牧をしていくというのが、元々のモンゴルでの放牧のスタイルであったわけです。ゲルはテントでできていますから、移動に便利なわけですが、ここ最近は遊牧民たちが定住化するということになっておりまして、自分たちの持つ草場というのが決まっています。草場で定住する、それは中国の面積でムーという単位を使いますけれども、一家が数万ムーの土地、要するに草場を持っていまして、そこに定住しているという、そこに建っているのはゲルではなくて普通の家、丈夫なゲルより丈夫な家を建てていくということに、今はなっているわけです。ですから、この映画は時代が変化したモンゴル草原におけるですね。人々の暮らしに、できるだけ忠実に作った映画です。
 
Q:ワン・ルイ監督に質問です。モンゴル族の映画を撮りたいと思った理由を教えてください。
 
監督:私は漢民族なんですね。1987年に初めてモンゴル草原に行った時からとても草原が好きになりました。1987年になぜそこに行ったかといいますとある役を演じるチャンスがありまして、そこでどうしても馬に乗らなければいけませんでした。その馬の練習をしましたら、馬やロバにとても親しみを感じるようになりました。そしてモンゴルの大草原がとても好きになりました。そのような経緯がありまして、自分としては草原にとても縁があるのだということを感じていました。そしてもう一つはですね、私にはモンゴル族の友達が非常に多いです。ここにいる3人の俳優たちよりも一つ上の世代の人たちと親しい友人がおります。そして、十数年前に本を読んでこの作品を撮ろうと思ったわけです。大好きな草原を、この物語を撮って映画にしようという風に思いました。
 
Q:ご出演の3人の方に質問です。ご自分で放牧生活をしたことがあるでしょうか。そのような生活をどういう風に思っていらっしゃるかをお聞きしたいです。
 
ジリムトゥさん:私自身、牧畜民でして今の内モンゴルにおける私たちのような世代の人たちというものは、映画の中に描かれた環境と同じような環境にいます。やはり、私も羊を飼い、馬を飼っているわけですね。私は俳優の仕事はしていますけれども、暇な時や仕事がない時は草原に帰って牧畜の仕事をしているわけなんです。本当の牧畜民です。
 
矢田部PD:ジリムトゥさんは本当にもちろん馬に乗ってらっしゃって、子供のころから乗っているのであんなことは朝飯前だという風におっしゃってましたけども。タナさんはいかがでしょう。
 
ジリムトゥさん:タナは歌手ですよね。歌手でもあり演技もできるっていう素敵な女性なんです。
 
タナさん:私も奥地区民の子です。今も私の両親は牧畜を糧として暮らしています。小さな時からこの映画と同じような環境にいたわけです。ですから私もジリムトゥさんと同じように暇なときは草原の家に帰って両親の仕事を手伝っています。
 
矢田部PD:イリチさんはいかがでしょうか。
 
イリチさん:僕はこの映画の中で若い夫婦、仲のいい二人の間を裂くようなちょっと悪い男の役をやっていますけども、実際の僕はそんなに悪いことはしません。この映画の中で描かれた今のモンゴルの環境なんですけれども、僕の周りの友人はみんなこういう感じなんです。皆さん羊を飼ったり、夫婦が喧嘩をしているっていうのも日常的なことです。牧畜民のごく日常的なリアルな生活を監督は細かく捉えて、とてもリアルに映画をお撮りになったということです。
 
Q:この映画の中で夏と真冬の草原が描かれていますけれども、撮影には何日間ぐらい要したのでしょうか。
 
監督:撮影には冬のシーンは11日、夏場のシーンは30日~40日くらいかけました。実は私自身、北京の電影学院の教師をしておりますのでちょうど夏休みと冬休みに合わせて撮らざるを得なかったので一挙に休みに合わせて撮るということになりました。そしてまた、なかなか予算があまりないので色々な困難は確かにありました。環境から言いますと、とにかく寒さをしのぐというのが大変で、夏場も草原は木陰がないですから体力的にものすごく大変でした。色々と大変なことはありましたけれども、撮っていてとても心が豊かで楽しかったです。それが思い出です。
 
矢田部PD:次の質問ですがイランの名監督、アミール・ナデリさんが場内にいらしています。
 
アミール・ナデリ監督:もう行かなければならないのですが、一言申し上げさせてください。非常に美しい映画でした。風景も素晴らしいし、二人のキャラクターも素晴らしいですし、それから編集も素晴らしいと思いました。物語を新鮮な思いで観ておりました。キャラクターの方々も非常にモダンだと思いました。ありがとう。
 
矢田部PD:ありがとうございます。アミール・ナデリ監督に締めていただいたような形になりました。監督からお別れの一言をいただけますか。
 
監督:皆さんがこの映画を観てくださって本当に私は感謝の思いでいっぱいです。私たちは本当にこの映画を撮るとき、心を込めて撮りました。ですのでより多くの方に観ていただければ嬉しいです。今日はどうもありがとうございました。

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