©2019 TIFF
俳優の仲代達矢が主演の8Kによる初の時代劇『
帰郷』が11月4日、第32回東京国際映画祭で特別上映された。1985年の第1回のオープニングを飾った『乱』に主演した仲代。映画祭から特別功労賞を贈られ、「70年近く役者をやってきて、本当に良かった」と、うれしそうにトロフィを掲げた。
『帰郷』で共演した常盤貴子、北村一輝、田中美里、杉田成道監督も駆けつけ祝福。初共演で娘役を演じた常盤は、花束を手渡し「圧倒的な存在感で、初めてといっていいくらい震えていたけれど、本当に優しく、温かく包み込んでくださった。胸をお借りしてドンと飛び込まなければ失礼だと思った」と感慨深げに振り返った。
藤沢周平氏の短編が原作で、老いた渡世人が罪をあがなうため故郷に戻り自身の過去と向き合う姿を描く。仲代は、「自分が出ていながら、一種の感動を覚えちょっと涙が出た。それは今までにやったことがない時代劇ということ」と満足げな笑みを浮かべた。
ただ、杉田監督の演出に対しては「私も12月13日で87歳。監督の下で演じていると、1回やって『はい、OK』と言った後、もう1回違う形でと言ってくる。分からないのに、『はい』と返事しちゃうんですね。年のいった役者が新人のような気持ちで演出を受けていました」と吐露。常盤も、「仲代さん、スタッフが胸が苦しいというくらい、すごい数をやられていました」と証言した。
すると話題の矛先は杉田監督に向かい、北村は「本当の鬼は笑っているんだということを知った」と苦笑。田中も、「ハードになるほど、うれしそうでした。でも、あの笑顔を見るとやらなきゃと思っちゃうんです」と明かした。
これに対し、杉田監督は笑顔を絶やさず「申し訳ないことをした。これに懲りず、またよろしくお願いします」とあくまで前向き。8Kについては、「ろうそくの火を初めてキーライトにできて、とてもうれしかった。女優さんは8Kはイヤだと言っていたけれど、美しく撮れています」と解説した。
そして、「仲代さんと中村敦夫さん、橋爪功さん、三田佳子さん、合わせると何歳か数えられないけれど、熱気のある芝居は感動的でした」とベテラン陣に感謝。仲代も、「人間を描く上で、ある意味、哲学的な映画だと思っている。娯楽的なものばかりが要求されている中、珍しい作品になるのでは」と自信のほどをうかがわせた。
「帰郷」は来年(2020年)1月に先行公開され、その後、CS「時代劇専門チャンネル」で放送。
第32回東京国際映画祭は、11月5日まで開催。