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2019.11.03 [インタビュー]
アジアの未来『ある妊婦の秘密の日記』公式インタビュー

この映画も女性の成長を描くという点で、前作と共通しますね
ある妊婦の秘密の日記
ある妊婦の秘密の日記

© 2019 TIFF

東京国際映画祭公式インタビュー 2019年10月31日
ジョディ・ロック(監督/脚本/原案)
ダダ・チャン(女優)
ケヴィン・チュー(俳優)

 
広告代理店に勤めるカーメンは、バスケットボール選手のオスカーと幸福な結婚生活を営んでいる。キャリア志望の彼女は、まだまだ働きたいのに子宝に恵まれてしまい……。
『レイジー・ヘイジー・クレイジー』(15)のジョディ・ロック監督、期待の新作は、出産をめぐる大らかなコメディ。自分の生い立ちが不幸だったから、人生が一変するから産むのが怖いという女性は、日本にも香港にも多い。これはそんな彼女たちに、「もっと素晴らしい人生があるよ」とエールを送る作品。前作と同様、多くの女性たちの共感を獲得することだろう。
東京国際映画祭の上映で来日した監督と、カーメン演じたダダさん、オスカーを演じたケヴィンさんにお話を伺った。
 
 
──日本もそうですが、香港も出生率がたいへん低いと聞いています。その辺の事情を含めて、本作を作ろうと思ったのですか?
ジョディ・ロック監督(以下、ロック監督):子供を産むことを、女性の視点から撮った映画というのは、今まであまりないんです。女性が子供を産むのはすごい重労働であり、つらさや心配なことがたくさんあります。それを正面から捉えてみたかったのです。
ある妊婦の秘密の日記
 
──主役のふたりは最初に脚本を読んで、どんなふうに思われましたか?
ダダ・チャン(以下、ダダ):これまで演じたことのない役柄だったので、大きな挑戦だと思いました。これはコメディであり、ラブロマンスでもあります。女性のマタニティブルーを題材にしていて、義理の母親との関係や夫との関係について、ものすごくリアルに書いているところに魅かれました。
ケヴィン・チュー(以下、ケヴィン):僕は脚本を渡されてすごく不安でした。まだ30歳だし、結婚して子供をもつのは遥か先という気持ちだったので。だけど監督から、「いま子供を産んでいる人たちはみんな大人ではなく、子供みたいな人たちだ。だからそのまま演じればいい」と言われて役を引きうけました。
 
──ケヴィンさんはバスケットボールの選手でありながら、就職活動を始めたりして、あちこち転々とする役ですね。
ケヴィン:香港のプロスポーツ選手は映画とほぼ同じで、スポンサーや支援者がたくさんいるわけではないのです。練習時間以外は別の仕事に従事している人も多くて、僕の友達もそういう人ばかりなんですよ(苦笑)。
ある妊婦の秘密の日記
 
──ダダさんは妊娠した事実をなんとか受け入れていこうとする役で、非常に感情の幅がある役を演じていますね。
ダダ:苦しむのも泣いたりするのも、すべてカーメンにとっては大切なことです。オスカーと大げんかして泣くシーンは、ワンテイクで演じました。最後まで演じ終えて、「彼女はきっといいママになるな」と感じました。
ある妊婦の秘密の日記
 
──カーメンの出産に対する不安を描く一方で、彼女の不幸な子供時代が描かれていて、映画に深みを与えていますね。
ロック監督:この作品の撮影期間は19日間で、香港の映画はだいたいそれくらいです。普段はそんなディテールを気にしている時間はないですが、今回はプロデューサーのジャクリーン・リウさんや、スタッフが意図を汲んで撮らせてくれたので、急いで撮るなかでも細かいディテールに気をつけて撮ることができました。
 
──破水した際の予行演習をするシーンは、一発撮りですか? 台本には書いていなくて、ケヴィンさんにそのままやらせてみたのかなと。
ロック監督:脚本には書いてありましたが、ケヴィンの芝居がすごく良くて、本当なら笑ってしまうところをすごく我慢してやってくれて、ああいうリアルなものになりました。ふたりが本当の夫婦のように仲良くやってくれたので、撮影も非常にスムーズにいったし、リアルに撮れました。
 
──この映画をひときわユニークなものにしているのが、ケアシッターのタムさんやパパクラブの存在です。男性は出産の痛みや苦しみが分かっていない。その思いもあって彼らを登場させたのですか?
ロック監督:その通りです(笑)。アジアで考えると、女性が母になる心構えは大抵どこの国でも教えてくれます。でも、子供を産むのは母親だけでなく必ず父親がいます。それなのに、どこの国も男性が父になる心構えを教えていないんです。だからそうした皮肉をこめて、彼らを登場させました。
 
――最後、監督にうかがいます。青春物からコメディに転じたという点で、何か新たに思うところはありましたか?
ロック監督:ジャンルは確かに別なのですが、女性の成長を描いている点で、同じ題材を扱っていると自分では感じています。『レイジー・ヘイジー・クレイジー』では、成長に伴う苦しみを描きましたが、今回は子供を産む女性の嬉しい苦しみなのでコメディにしたのです。
ある妊婦の秘密の日記
 
インタビュー/構成:赤塚成人(四月社・「CROSSCUT ASIA」冊子編集)
 


 
第32回東京国際映画祭 アジアの未来出品作品
ある妊婦の秘密の日記
ある妊婦の秘密の日記
© One Cool Flm Production Limited

監督:ジョディ・ロック [陸以心]
キャスト:ダダ・チャン、ケヴィン・チュー、キャンディス・ユー

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