太宰治の名著「人間失格」を大胆に アレンジした『HUMAN LOST 人間失格』
第32回東京国際映画祭の特別招待作品『
HUMAN LOST 人間失格』の舞台挨拶が11月2日、東京・EXシアター六本木で行われ、ヒロインの声を務めた花澤香菜、メガホンをとった木崎文智監督、ストーリーの原案と脚本を手掛けた小説家・冲方丁氏が登壇した。
太宰治の名著「人間失格」を大胆にアレンジしたアニメーション映画。医療の革命的な進歩により人が死を克服した昭和111年の東京を舞台に、薬物に溺れ怠惰な暮らしを送る主人公・大庭葉藏が運命に翻弄されるさまを描く。葉藏の声を宮野真守が務めるほか、櫻井孝宏、福山潤らが出演している。
ある危機に対抗する国家機関“ヒラメ”の隊員で、不思議な力を秘める柊美子役を務めた花澤。「私、大学で日本語日本文学科に通っていたので、太宰治好きがたくさんいました。一緒に文学散歩で、(太宰が)入水自殺をした玉川上水を巡ったりして。個人的にもすごく好きだった作品に、今関わることができたという嬉しい気持ちです」と、太宰とのつながりを明かす。オファーを受けた時の思いを問われ、「びっくりしました。どういう作品になるのか全く想像できなかったです。なじみのあるスタッフさんが「人間失格」とどう結びつくのか、わくわくしてました」と振り返っていた。
「「古典文学とSFアクションの融合に興味をひかれた」という木崎監督は、「一筋縄ではいかないだろうなと思いましたが、冲方さんが参加されるということで、「何とかなるんじゃないの」と、割とライトな感じで引き受けました(笑)。でも相当苦労しました」と心情を吐露。木崎監督の目配せを受けた冲方氏も「(脚本づくりは)大変すぎてほとんど覚えてない(笑)」と苦労をにじませ、ブレイクスルーが2カ所あったと説明する。「1つは人間失格というタイトルの解釈。人間という規範から外れてしまうのではなく、人間全体が失格している世界を描こうということになり、これがSF作品になったきっかけです」「もう1つは「死をどう描くか」。むしろ死がない世界を描くことで、逆に死が浮かび上がる世界にしようと考えました」と解説を加えた。
木崎監督は世界観に関して、「日本なんですけど、海外の人が見た日本に見えるような、ちょっとおかしな感じをあえて出しました」と語る。MCの『
AKIRA』『ブレードランナー』のオマージュが随所にちりばめられていると思いました」というコメントに、冲方氏は『
AKIRA』のオマージュであるバイクシーンに言及し、「あの狂ったシーンができたことで、「この映画いける」と確信しました」と自信をのぞかせた。
この日は、新しいキービジュアルがお披露目。登壇陣は「かっこいいですね!」と口をそろえ、しげしげと眺めていた。『
HUMAN LOST 人間失格』は、11月29日から全国で公開。
第32回東京国際映画祭は11月5日まで開催されている。