本田雅一氏と円谷プロの隠田雅浩氏
国産初の本格的な特撮テレビドラマとして1966年に放送され、怪獣ブームを巻き起こした『ウルトラQ』内のエピソード『
東京氷河期』の4K上映が11月1日、第32回東京国際映画祭内のジャパニーズ・アニメーション部門作品としてTOHOシネマズ六本木で上映され、オーディオ&ビジュアル評論家でコラムニストの本田雅一氏、円谷プロの製作本部エグゼクティブマネージャー・隠田雅浩氏が来場。本シリーズの映像のこだわりを徹底解説した。
『東京氷河期』は、真夏にもかかわらず異常な寒波が広がった東京が舞台。まるで氷河期のような姿に変貌した街を目の当たりにした万城目は、この異常な寒波の原因は以前南極で遭遇したペギラの仕業ではないかと推測する……という物語。今回の4K映像は、劇場用映画と同じクオリティを持つ35ミリネガフィルムから直接制作されたものだ。
『ウルトラQ』シリーズといえば、2011年に『総天然色ウルトラQ』と題して、35ミリのローコントラスト・ポジフィルムからのHDテレシネ、着色、リマスターを行ったものがあったが、今回の4K版はそれとはさらに違うものだという。隠田氏も「厳密に言うと『総天然色』はポジからのテレシネ(フィルムを流しながらスキャンしたもの)でしたが、今回の4K版はネガをダイレクトに1コマずつスキャンしたもの。圧倒的に情報量が違うんです」と自負。この日の映画祭で上映されたのは、NHKでのテレビ放送版と違う素材だそうで、隠田氏も「今日の(上映の)ために作業をしました。スクリーン上映というのは、テレビ放送のメディアとは違いますから。スクリーンでどう見えるかにこだわって調整しました」と明かし、会場を驚かせた。
今回、新たに4K化したことで「テストピースを作ってみて驚いたのがメインタイトルでした。これは印象深くて、音も含めて『ウルトラQ』だなと思うのですが、今回テストしたものを初めて見た時はまったく見たことがないタイトルになったんです。それは(4Kが)もともと撮影時のスペックを余すことなく表現出来る新しいキャンバスだからだと思います」と語る隠田氏。だが鮮明な画面になったからこそ、作業はより慎重になったという。「やはり自分が作り出したものではなく、先達がやったものなので。今の技術で再現すると、往々にして見えすぎてしまうところがあります。ですから作る時のセオリーとして、演出の意図として、暗いところはあえて見せないように。黒の階調でどれだけの表現が出来るのかということ。そして演出家が見せたくないだろうなというものは出来るだけ見せないように、何度もやり直しました」と振り返る。
そのこだわりの数々を聞いた本田氏は感嘆した様子で、「すでに『総天然色版』があったので、実はリマスターしたといってもそれほどではないのではないかと思っていたのですが、やはり35ミリのフィルムというのはすごいなと思いました。当時の撮影シーンが思い浮かぶようにこだわってデジタルシネマ用に作っていただいて。本当にありがとうございます」と感謝の思いを述べると、隠田氏も「そういう風に楽しみ方を発見してくださってありがたいです」と笑顔を見せた。