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2019.11.02 [イベントレポート]
フランス映画『戦場を探す旅』監督がメキシコの植民地戦争を描いた理由
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オーレリアン・ベルネ=レルミュジオー監督 と主演のマリック・ジディ

第32回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品されたフランス映画『戦場を探す旅』が11月2日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで公式上映され、脚本も兼ねたオーレリアン・ベルネ=レルミュジオー監督と主演のマリック・ジディが会見した。

戦場を探す旅』は19世紀半ば、植民地戦争が繰り広げられるメキシコの山岳地帯が舞台。戦争の写真を撮るためメキシコに赴いたフランス人写真家ルイは、戦闘を求めて険しい自然の中をさまよううち、現地の農民ピントと出会う。ふたりは言葉も通じない中で少しずつ打ち解けていき、ついに戦場にたどり着いた時、ルイは戦争の現実を目の当たりにすると同時に自分が背負っていた過去に直面し、本当に撮りたかったものに気づく。

レルミュジオー監督は、「私の大好きな日本で映画を紹介することができて本当にうれしい。日本の方は特に映画に対していい感性を持っている」と挨拶。ジディは前日、東京に到着して観客と一緒に初めて仕上がった作品を見たそうで、「この映画はコロンビアという世界の裏側で撮影したが、今回、東京というまた違う場所で紹介できてうれしい」と語った。

150年以上前のメキシコの戦争を舞台にしたことについて、レルミュジオー監督は「あえて自分の知らない時代、知らない場所を描きたいと思った」と前置きし、「メキシコは当時、フランスが植民地戦争に参戦していたという時代背景と、ルイ自身が自分の内面と闘っている人物なので、その2つの戦いがマッチするのが面白いと思った」と説明。写真家を選んだ理由は「自分は時代の先駆者に敬意を持っている。当時の戦場カメラマンは重い機材を運び、セッティングし、(撮影できるまで)待たなければならなかった。そういう人に敬意があって選んだ」と語り、「写真家はそこにあるものを撮って残す使命を担っている」とし、ベルギーの作家モーリス・メーテルリンクの文章に多くのインスピレーションを得たエピソードを紹介した。

一方、ジディはルイという人物に関して「監督から、この人物は常に模索を続けている人と言われた。自分の亡くなった息子を捜し続けているし、死にも向き合っている。強い意思を持っているけれど、もろさも同時に持っていて、もろ刃の上に立っているような感じ。強い意思を持ち、写真というツールで理想に向かって突き進んでいこうという思いを持っている人」と説明。深い余韻を残す映画に質問は尽きなかった。

第32回東京国際映画祭は、11月5日まで開催。
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