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2019.11.01 [イベントレポート]
スペイン新鋭監督、資金集めに苦労し製作に5年費やした「ぶっ飛んだ作品」をアピール
列車旅行のすすめ
アリツ・モレノ監督(左)、原作者アントニオ・オレフド

第32回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品された『列車旅行のすすめ』が11月1日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、メガホンをとったスペインの新鋭アリツ・モレノ、原作者のアントニオ・オレフドが会見を行った。

モレノ監督が巧みなストーリーテリングで紡ぐ人間ドラマ。コソボ戦争に赴いて片腕で帰還した男、不幸な結婚を繰り返す女、正体不明の医師……。複数のエピソードが絡み合い、奇想天外な結末へと向かっていく。

冒頭でモレノ監督は、「私の映画はぶっ飛んでいます。めっちゃ頑張った。楽しかった?」と流ちょうな日本語で挨拶し、会場を沸かせる。しかし、「ぶっ飛んだ」ストーリーゆえに苦労も多かったそう。「スペインで映画を作ること自体が、そもそも難しいんです。ストーリーがぶっ飛んでいて、人間の暗部をテーマにしていることもあり、こちらから働きかけても国営のテレビ局はサポートしてくれなかった」と振り返る。

製作に5年の歳月がかかった理由を問われ、「完成した映画を見た皆さんには作品を理解して頂けたと思います。ですが、資金集めの段階で、台本だけで説明することが非常に難しい物語なんです。ヨーロッパの近隣諸国との共同製作も考えましたが、(関係者に)『3分で説明してくれ』と言われても、話すことが難しかった。ビジュアルで何とか伝えなくてはいけないと思いました」と明かした。

そして、唯一無二のユニークな脚本に魅了され、ピラール・カストロ、ルイス・トサルらスペインの豪華キャスト陣が集結し、資金援助を受けることができた。モレノ監督は「脚本が素晴らしく、オリジナリティあふれるキャラクターに皆さんひかれたのかな」と分析。最後に「なぜか私は、『日本人もぶっ飛んでいるので、こういう映画にも理解を示してくれるんじゃないのかな』と思っております」とお茶目に締めくくり、会場は拍手に包まれた。

第32回東京国際映画祭は、11月5日まで開催。
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