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第32回東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門に出品された青春音楽映画『
花と雨』が11月1日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、出演した笠松将、大西礼芳、メガホンをとった土屋貴史監督が舞台挨拶に臨んだ。
ヒップホップアーティスト・SEEDAが2006年に発表し、名盤と名高い同名アルバムを原案に、SEEDAの自伝的エピソードも交えながら何者かになりたいと願うある青年の成長を描く。幼少期をロンドンで過ごした帰国子女の吉田(笠松)は、閉塞的な日本の空気になじめないまま高校生活を送っていた。いつしか学校から距離を置くようになった彼は、ヒップホップと出合い、自分を表現する場所や仲間を見つけていく。しかし、ラップバトルでの敗北や仲間の裏切りなど厳しい現実を前に、再び自分を見失ってしまう。
本作で初長編監督デビューを果たした土屋監督は、終始緊張の面持ち。笠松に「汗すごいよ!」と突っ込まれながらも、「今日が初めて一般に公開される機会になりました。ぜひ楽しんで、一緒に育ててくださると嬉しいです」と真摯に言葉を紡ぐ。続いてラップに初挑戦した笠松は、「もともとSEEDAさんも聞いていましたし、ヒップホップのジャンルで好きなアーティストの方々もたくさんいました。歌える曲もあったので、(最初は)『そんなに難しくないだろうな』と思っていたんですけど、実際やるとなると……。今回ラップで指導に入ってくださっている東京最高峰のMC・仙人掌さんにマンツーマンで教えてもらって、家にもうかがいました。初めてヘッドホンをつけて、マイクで曲をとった時は、テンポも合わないし音も外れるし……、本当にひどくて」と苦労をのぞかせる。「焦って一生懸命練習して、それでも100点というか、満足いくところまではいかなかったですから。奥が深い音楽、文化だなあと思いましたね」と謙虚に振り返っていた。
吉田にとっての唯一の理解者である姉を演じた大西は、役どころ同様、笠松の挑戦の日々を見守っていた。「彼がひたむきに音楽と向き合いながら、悶々としてストレスフルな日常を送っている中で、唯一本音を話せる、一息つける存在になれたらいいなと思って、日々現場で笠松くんと接していました」といい、「ノートを真っ黒にしながら歌詞をいっぱい書いて、練習している姿を見ました」と、笠松の努力家としての一面を明かしていた。
笠松はクランクインの前日に、SEEDAと2人きりで会い、ドライブしながら様々な話をしたという。「『当時こういうことがあったんだよ』とか『あの歌詞を書いていた時はこうだったよ』とか語りながら、いろいろな場所に連れて行ってくれて。そこで『笠松さんに全部託したい』と言ってくれて、自分も『一生懸命作ろう』と思った」と、SEEDAと交わした固い約束に思いを馳せていた。
『花と雨』は20年1月17日に全国で公開。
第32回東京国際映画祭は、11月5日まで開催される。