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第32回東京国際映画祭のコンペティション部門に選出されたトルコ映画『
湖上のリンゴ』の公式会見が11月1日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われ、監督/脚本/編集を手がけたレイス・チェリッキ、プロデューサーのディレキ・アイドゥンが登壇した。
物語の舞台は、アナトリアの北東部。干ばつに苦しむ山村に暮らす少年ムスタファは、アシュクという伝統的な歌い手になる修行をしながら細々と家計を支えている。家は母子家庭で、母親はムスタファに立派なアシュクになって稼ぎ頭になってくれることを期待しているが、親方の指導は厳しくアシュクになる道は遠いかに見える。そんなある日、ムスタファが淡い恋心を抱いていた少女の婚礼の話が持ち上がった。ムスタファは、親方のお供で隣村に行くことになり、その少女から頼まれて赤いリンゴを土産に持ち帰るが……。
ムスタファ少年の物語は、土地の言い伝えや風習、民族の伝統音楽がちりばめられ、神聖な雰囲気とある種の寓話のようなトーンに包まれている。舞台のアナトリアはチェリッキ監督の故郷で、伝統的な歌い手であるアシュクたちの魅力を「彼らが使うのは、人々が忘れかけていっているようなたくさんの言葉や詩。それらが皆さんの記憶の中に留まるような、そういう映画になって欲しいという思いでこの映画を作りました」と説明する。
プロデューサーのアイドゥンも「失われつつある文化や、伝統の歌い手の技術。今もまだ残っているこの文化をぜひ伝えたかった」とプロデュースのきっかけを振り返る。「私自身、今回、脚本を読んだ時に、なんてポエティックな内容だろうととても心惹かれました」。
タイトルにもなっているリンゴにまつわるエピソードだが、チェリッキ監督は「リンゴは人類の創世や、アダムとイブのリンゴのメタファー。そして、この映画のタイトルについていうと、私の子どもの頃の教師で、のちに偉大な作家になったドゥルスン先生という方がいて、彼の著書のタイトルからいただいたものです。ずっと前からの先生との約束で、今回それが叶いました」と明かした。
第32回東京国際映画祭は、11月5日まで開催。