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2019.11.01 [イベントレポート]
「今まで違うものをやりたいと脚本を書いてこの作品が出来上がりました」10/31(木)Q&A CROSSCUT ASIA 『それぞれの記憶』

それぞれの記憶

©2019 TIFF

 
10/31(木) CROSSCUT ASIA ♯06 ファンタスティック! 東南アジア『それぞれの記憶』上映後シーグリッド・アーンドレア P・ベルナード監督(右)、デニス・チャムさん(音響・左)をお迎えし、Q&Aが行われました。
⇒作品詳細
 
石坂PD(司会):ゲストはシーグリッド・アーンドレアP・ベルナード監督、そしてサウンドデザイン、音響を担当のデニス・チャムさんです。
 
シーグリッド・アーンドレアP・ベルナード監督(以下:監督):こんにちは、おはようございます。ありがとうございます。まずは東京国際映画祭にお招きいただきまして本当にありがとうございます。そして皆さん私の映画を寝ないで観ていただいて本当にありがとうございます。
 
石坂PD:デニスさんお願いいたします。
 
デニス・チャムさん(以下:デニスさん):このような素晴らしい映画館に来ることができてすごく嬉しいです。音響も映画自体も非常に素晴らしいものでした。そして今回初めて監督と映画をさせていただいて非常に光栄に思っています。
 
石坂PD:シーグリッドさんといえばラブストーリーの名手ということでフィリピンでは知られておりますけれども、今回はそういう意味ではちょっと違う意味のジャンルにチャレンジしたという感じなのでしょうか。
 
監督:『それぞれの記憶』はラブストーリーでもあるという風に思っています。そしてこれが5本目の長編映画になります。これまでの4作はラブストーリーであったりロマンティックコメディーみたいなものを制作してきましたので、今回違うジャンルに挑戦してみて心理スリラーといいますか、ホラーを盛り込んでみました。ただ、作品を書いていた時点ではどのジャンルにしようと考えていたわけではなくて、今までやったものと違うものをやりたいと書いてこのような作品が出来上がりました。
 
石坂PD:デニスさん、この作品はサイコスリラーということで音も大変重要だったと思います。どんなところに一番気を遣われましたか。
 
デニスさん:非常に象徴的な音というのがいくつか映画の中で出てきましたが、例えば馬であったり犬であったり、すごくうるさい場面もあるかと思えば非常に静かな場面っていうのもあって、静寂というのをうまく使おうという風に監督から指示をいただいて作ってみました。
 
石坂PD:ありがとうございます。それでは皆様からのご質問を受けたいと思います。
 
Q:なぜこの映画の舞台をジョージアにされたのでしょうか。
 
監督:ジョージアというのは撮影監督のボーイ・イニゲスさんからの提案だったのですけれども、私は映画の舞台にどこか国で、フィリピン人が少ないところというのを探していました。ご存じのようにフィリピン人って世界中いろんなところにいるのでそれがとても難しくて。ただ、ジョージアはフィリピン人が30人しかいません。私は全員と会いまして、ここならいいなと、ホアキムがフィリピンから離れて暮らすのにいい国ではないかと考えました。最初に撮影監督から「ジョージアはどう?」って言われたときに、アメリカのジョージア州じゃないかと間違えてしまったくらい国自体を知りませんでした。色々リサーチをしましたが、リサーチをする中で、非常に美しい、素晴らしい国であるというのを感じまして、それと同時にミステリアスな場面もあったり文化も豊かというところで舞台に選びました。
 
Q:このミステリアスな映画にあの音楽を組み合わせた経緯を教えてください。
 
監督:伝統的なジョージアの音楽なんですね。3つあったんですけどもテーマが「愛」、「復讐」そして「死」について歌っていました。
 
Q:キャスティングについて教えてください。
 
監督:実はこの脚本は私は、違う俳優さんをイメージして書いたものだったんですけれども、今回のキャスティングはプロデューサーからの提案でした。なので、俳優さんたちに私は率直にちょっと役のイメージには合わないんじゃないかと実は言ったんですけども、その俳優さんたちは非常にやりたいという情熱を示してくださったので、もしやりたいんでしたら条件がありますということでいくつか条件を出しました。演技のワークショップをとってほしいということ、男性には5キロ弱ほど体重を増やしてほしい、そして髭を生やしてほしいと伝えました。女性の方にはカツラを被るというのは私は嫌だったので、髪の毛を染めてほしいという風に条件を出しました。にもかかわらず誰もがクリアしてくれて非常にやりたいという気持ちを見せてくれました。特に男性の俳優さんの方は演技が難しくて、いつも彼が演じている作品はラブストーリーであったりという感じなので、2つの役を使い分けてというところでは非常に難しさがあったと思います。そして女性の方は、3つの役を演じ分けなくてはならないところで非常に難しかったのではないかなと思います。
 
Q:映画の撮影期間を教えてください
 
監督:全体でいうと1年くらいと思います。まずジョージアにロケハンに行って一か月くらい滞在したんですけれども、そこで様々なリサーチをしました。ちょうど去年(2018年)の7月くらいになると思います。脚本を昨年書いて、撮影をしたのが今年の1月の終わりくらいから二か月間くらい、フィリピンでの撮影期間が18日くらいだったかなという風に記憶しています。
 
石坂PD:フィリピン映画の場合非常に早く撮ってどんどん回転させていくという、映画大国なんでそういう回転ができているとお聞きしています。シーグリッドさんは割合、寡作というかじっくりと1本作るタイプの感じがしますけれども、どうでしょうか。
 
監督:多分フィリピンの映画監督の中で一番遅いんじゃないかっていう風に思うくらいですが、1年に1作くらいのペースで今は映画を作っています。構成を考えてコンセプトをまとめるのにやはりすごく時間がかかってしまうからです。ただ、脚本は一週間くらいしかかかりませんでした。すべて頭の中にあったからなんです。私のスタイルとしてはいくつも掛け持ちするのではなくて、1つの映画を撮り終わってから次にというスタイルです。
 
石坂PD:でも1年1本って日本で言ったら相当なハイペースですけどね(笑)
 
監督:よく日本では「もう5作も作ったの?」みたいに言われますが、フィリピンでは皆さんもっとハイペースで作っていらっしゃるんです。
 
石坂PD:デニスさんは色々なクリエイターと組んでおられますが、シーグリッドさんというのはどのような監督さんですか?
 
デニスさん:レコーディングのスタジオを30年くらい前に作ってコマーシャルの仕事などをやっていました。他の作品で出来上がった後に音を当てる際にご一緒したときに素晴らしい方だと思って、ぜひ一緒に仕事をさせていただきたいという風に自分からアピールしたんです。私は60歳を超えまして、やりたいことリストみたいなのが自分の中にあるんでけれども、それの一つとして彼女と一緒に仕事をしたいという風に思っていましたので、今回このような機会をいただいたことを本当にうれしく思っていますし、皆さんも私の音楽を気に入っていただけたら本当に嬉しいです。
 
監督:デニスさんと一緒にお仕事をさせていただく中で、非常に良かったと思うことは、彼は非常にクリエイティブな人であるということ、そして、私が提案したことに対してその通りにやるだけではなくて、逆にこんなことはどう?っていう新しい提案もしてくれるんです。プロセスには時間がかかるんですけれども非常にいいものができたと思っています。
 
石坂PD:では最後にシーグリッド監督から一言。
 
監督:今回、私の映画を観ていただいて本当にありがとうございました。皆さんが興味を持っていただけて、また上映される機会があったらいいなと思うんですけれどもそれは他の国になるかもしれません。日本でまた上映があるかは分からないですけれども、ぜひまた皆さんとお会いできればと思います。本日は本当にありがとうございました。

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