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2019.10.31 [イベントレポート]
壮絶な女のバトルをブラックなユーモアで描いた天野監督「私なりの反戦映画」
ミセス・ノイズィ
ふたりの女の喧嘩が泥沼化していく……

第32回東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門に出品された『ミセス・ノイズィ』が10月31日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで公式上映され、天野千尋監督と主演の篠原ゆき子、大高洋子、長尾卓磨、宮崎太一らキャストが舞台挨拶に立った。また、上映後には天野監督と脚本の松枝佳紀が観客とのQ&Aに応じた。

「この映画を一言でいうなら、女ふたりの喧嘩が泥沼化していくというお話。二人の仁義なき戦いをご覧いただけたらと思います」。天野監督は、舞台挨拶でこう切り出した。「この映画を作ってきた3年間、私は戦いについて考え続けてきました。人の正しい態度とはなんだろうと。喧嘩というのは、やっている本人たちは生々しい感情をぶつけて、悲劇が起こったり、人の人生を狂わせたりすると思うけれど、この映画の中でも、周りの人がふたりに振り回されていくところを描いている。でも客観的にみると、人の喧嘩ってエンタメ性もあるというか、楽しめちゃうものでもある。そういう要素もこの映画の中にはあるのですが、皆さんにもなぜ人が喧嘩してしまうのか、この映画を見て考えてもらえたらなと思います」。

運命の歯車が狂うほど泥沼化していく女たちの喧嘩とは……。きっかけは、1枚の布団をめぐるささいな口論だった。引っ越して来たばかりの真紀が、子育てと小説家としての仕事の両立に悩むある日、隣家から聞こえてきた布団を叩く音をうるさく思い、隣人の主婦・美和子に目くじらを立ててしまう。真紀は美和子の真実を知らぬまま、ふたりのトラブルは続く。やがて、その口論を映した動画がSNSで拡散されて悲劇は起こってしまう。

シリアスなムードに包まれながら、コミカルな場面もあり多面的な顔を見せる本作だが、上映後のQ&Aでは創作秘話に話題が及んだ。物語の創作の発端は、3年前に松枝が主催したワークショップだったという。天野監督は、「去年のちょうど今頃がクランクアップだったのですが、撮影に入る2年前に、ワークショップをやりました。ワークショップの前から決めていたのは、『騒音おばさん』がモチーフの映画を撮ろうということ。そして物事は、見る角度によって見える景色が違う。人も別の角度からみると悪人にも善人にもなる、そういうことを盛り込んだ映画にしようということも、当初から構想していました」と述懐する。

主人公の真紀に天野監督自身が投影されているのかという質問に、「私はどちらかというと、あんまり喧嘩をしないタイプなんです。腹を立てることはあっても、客観的にものごとを見る方だと思います。世の中で喧嘩や対立、戦争、紛争が起こっているのを見ると、すごく虚しい気持ちになる。もう少し違う角度から見たら、起こらなかったんじゃないか、解決できたんじゃないかと、私は日々思っています。いってみれば、この映画は私なりの反戦映画になるのかも」と語った。
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