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2019.10.31 [イベントレポート]
大林宣彦監督、最新作『海辺の映画館―キネマの玉手箱』で貫く反戦「未来は変えられるかもしれない」
大林宣彦監督
取材に応じた大林宣彦監督

がんとの闘いを続ける大林宣彦監督が最新作『海辺の映画館―キネマの玉手箱 Labyrinth of Cinema』を完成させ、第32回東京国際映画祭の特集上映「映像の魔術師 大林宣彦」でお披露目される。映画への尽きぬ愛、反戦への思いをこれでもかというくらいに詰め込んだ3時間に及ぶ一大叙情詩だ。

肺がんのステージ4で、余命3カ月と宣告されたのは16年8月。しかし、大林監督は“がんと仲良くする”という前向きなスタンスで「宿主を大切にしろよ。俺が死んだらおまえさんも死ぬんだぞ」と言い聞かせながら治療に当たってきた。その上で大きな支えになったのが映画への情熱といえる。

「今の切羽詰まった時代、表現の自由で一番問われているのは、自分自身にウソをつかず正直であればいいということ。それが映画であるという社会的事実があるわけで、(観客の)皆さんも受け入れてくださると思っているんです」

昨年夏に撮影された今作は、戦争映画を見ていた3人がスクリーンの世界に飛び込み、さまざまな映画の世界を体験し、広島で原爆に遭う直前の移動劇団「桜隊」と出会い、命の尊さに直面する。まさに大林監督の映画人生がそのまま活写され、ここまで反戦へのメッセージを直截的に投げかけてくるのも珍しい。

「戦争を知り生き残った子どもであるがゆえに分かる愚かしさやいろんなことを、映画で過去を変えることはできないけれど、未来は変えられるかもしれないという僕の持論です。ただ、是非論はしません。核兵器のボタンを押すのもあなたなら、押して殺されるのもあなたなんだよ。だからあなたが決めなさいと」

かつて90年代に九州電力のCMに出演したことによって、原発推進論者のレッテルを貼られたこともある。その根拠のない風評に対する怒りも、原動力となっている。

「僕はあのイヤな戦争を、人類がまた起こさないために映画を作り続けている。あなたならどうするんだという問いかけが、今の私のテーマ。1人1人の力なき庶民、つまり映画ファンがそう信じてくれれば、時間はかかるだろうけれど映画の未来も幸せなものにできるかもしれない」

自身の映画を子どもたちに見せる上映会も行っており、「この頃、ファンレターが多いんです」とほほ笑む。最も多いのが幼稚園児だというから驚きだ。

「大林のおじいちゃん、戦争のことを教えてくださいと言うんです。これは、僕たちはこれから友情も生まれ好きな人もできるだろうし、僕たちの子どもや孫、さらに先の人類の未来を任されたのだから、それをやり遂げるためにぜひ知りたいということ。これは映画人として、とてもありがたい」

映画の未来は、本作にも出演している手塚 眞監督に希望を託す。『ばるぼら』がコンペ部門に選出された手塚監督の前作『星くず兄弟の新たな伝説』(17)に「新しい日本の映画だと信じます」と可能性を見いだしたからだ。

「彼は素晴らしい才能を持っているのに、作家的な言葉で言えば初期に筆を折って作らなくなった。当時は『大林さんのようなテーマがないから、撮っちゃいけない』と言っていた彼が、『自分自身にウソをつかず、一生懸命表現しようとしている人たちの未来のために映画を作るというテーマができました』となったんです」

まさに我が意を得たりという、うれしそうな表情が印象的だった。

第32回東京国際映画祭は11月5日まで開催。「映像の魔術師 大林宣彦」ではほかに『花筐 HANAGATAMI』『異人たちとの夏』『野ゆき山ゆき海べゆき』『さびしんぼう』が上映される。
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