メキシコでの撮影を語った 松永大司監督と今市隆二
第32回東京国際映画祭で10月30日、特別上映『
その瞬間、僕は泣きたくなった -CINEMA FIGHTERS project-』が、EXシアター六本木で上映された。上映後にはティーチインが行われ、メガホンをとった松永大司監督と今市隆二(三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE)が登壇した。
本作は、EXILE HIRO率いるLDH JAPANと、俳優の別所哲也が代表を務める「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア」(SSFF&ASIA)、「EXILE」などに楽曲提供してきた作詞家・小竹正人がコラボレーションしたオムニバス映画『CINEMA FIGHTERS project』の第3弾。詩と音楽、映像をひとつに融合した5編の短編作品から構成されており、松永監督のほか三池崇史、行定勲、松永大司、洞内広樹、井上博貴が監督を務めた。
今市は『On The Way』に出演。NPO活動をしている母の代理でメキシコへやってきた健太(今市)は、アメリカを目指す隣国からの移民たちのために食事や衣類を提供する移民センターを訪れる。そこで彼は、命がけで国境を目指す人々の姿を目の当たりにする。
歌手・アーティストとして活躍する今市だが、本作で演技初挑戦。「撮影に臨む前にレッスンを受けたいと松永監督に伝えたが、全くしないでほしいと言われた。ひとりの人間としての今市隆二を撮りたいと言ってくださった。結局何もレッスンを受けないまま撮影が始まったが、初回に30テイクも撮影し直した。上手くいくとは思っていなかったが、まさかだった」と恥ずかしそうに話した。松永監督から演技の指導とアドバイスももらったようで「人間としての今市隆二を引き出してくれた。初めてのことばかりで戸惑いもあり、地に足をつけて演技をしろなど声をかけてもらった」と撮影を振り返った。
本作の舞台はメキシコ、そして移民をテーマにしている。松永監督に理由について聞くと「今年初めからアメリカに移住していたこともあり、映画製作の声をかけられた時にはアメリカで撮影したいと思っていた。製作にあたりリサーチしていくうち、メキシコの移民問題について興味を持った。実際にメキシコに行き移民センターを訪れたり、移民の人にインタビューもしたりし、それを使って映画を作った」と社会的な問題を含めた作品づくりをしたという。
ただ、撮影場所によってはマフィアに襲撃される恐れもあったようで、松永監督は「そのことを現地の人に説明すると、世界にこのような場所があることを知らせてほしいからぜひ撮影してくれと、とても協力的だった」と話した。
Q&Aでは、本作を鑑賞し感動した観客が声を詰まらせながら質問する場面もみられた。メキシコでの撮影に関して聞かれた松永監督は、「撮影は4日間。撮影クルーは日本、アメリカ、メキシコからも参加して撮影以外の時間もともに過ごした。まるで家族のような撮影期間だった」、今市は「タコスが美味しかった。現地で本場の味を食べるのが楽しみだったが、日本とメキシコのタコスは違っていて包む料理は全てタコス。それには驚いたがとても美味しかった」と食事の話題になると互いに顔を見合わせ、笑顔で撮影を振り返った。
最後に、今市は「松永監督と食事に行くなどコミュニケーションを取りながら役を作っていった。誰もが皆胸に何かを抱えながら生きているんだ、という思いを大切にして演じた。同じように何かを背負いながら生きている人たちの背中を押す作品になった。ぜひ見てほしい」と演じた役と作品の魅力について力強くアピールした。
第32回東京国際映画祭は、11月5日まで開催。