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2019.10.30 [イベントレポート]
フィリピンの鬼才ラブ・ディアスのカンヌ出品作『停止』女優が来日し作品を解説
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来日したピンキー・アマドア

第32回東京国際映画祭の「CROSSCUT ASIA #06 ファンタスティック!東南アジア」出品作『停止』が10月30日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、来日した女優のピンキー・アマドアが観客とのQ&Aに応じた。

『立ち去った女』で第73回ベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞したフィリピンの鬼才ラブ・ディアスが初めて手がけた近未来SFドラマ。舞台は2034年のマニラ。3年前に火山が噴火し、東南アジア一帯は火山灰の影響によって太陽が隠れ、降りしきる雨とともに闇の中に沈んでいた。狂気の独裁者が専制政治を行い、街では人々が伝染病によって命を落としていた。

ディアス監督特有のモノクロ、長回しで描き出された本作は、SFという形をとりながらも、自国の過去と未来のあり方を示唆するような作品だ。今年のカンヌ国際映画祭監督週間にも出品された。アマドアは、「ジーン博士の使命は記憶を失った国民の記憶を呼び覚ますのです。2034年、独裁者は隠れて暮らし、火山の影響で太陽が当たらなくなり、食べ物も配給制、人々はドローンで支配されている状況。そして、フィリピンはスペインから300年間近く植民地支配を受けました。奴隷として生きなければならない人はその記憶を消すために何百年もかかるという話を監督としました。未来を生きるために、過去を思い出す、そういったことを喚起させる役を演じました」と作品のテーマと自身が演じた役柄について語った。

また、観客から大統領役を演じたジョエル・ラマンガンのエキセントリックな演技は即興かと問われると、「彼のエキセントリックな行動のほとんどは脚本に書かれています。権力を持った独裁者が身を守るために隠れているのです。暗殺されそうになり、彼も暗殺を企てた経験がある。そういった精神状態、多面性を出すために書かれた行動です。また、母親との過去の問題を抱えたゆがんだ独裁者として描かれています」とキャラクター設定を説明した。

この日のQ&Aは女優のマラ・ロペスも登壇予定だったが、参加できなかったことについて謝罪の言葉を述べ、「いつもはオーディションを受けて役を得るのですが、今回はプロデューサーから直接電話をいただきました。ラブ・ディアス監督というフィリピン映画界のスーパーヒーロー、世界の映画界のロックスターと仕事ができて幸せでした」とメッセージを残した。

第32回東京国際映画祭は、11月5日まで開催。
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