[映画.com ニュース]国際交流基金アジアセンター主催「響きあうアジア2019」の一環として、東南アジアの映画にスポットライトを当てる特集「東南アジア映画の巨匠たち」が開催中の東京・有楽町スバル座で7月4日、シンガポール出身の俊英エリック・クー監督が手がけた『ミーポック・マン』(1995)がデジタルリストア版で上映された。
伝説的漫画家・辰巳ヨシヒロの半生を映画化した『TATSUMI マンガに革命を起こした男』、斎藤 工が主演した『家族のレシピ』で知られるクー監督の長編デビュー作。ミーポック(麺料理)売りの青年と娼婦の愛を描き、シンガポール映画の復興期を代表する一作として知られる。この日は、本国で上映禁止となった初期の短篇『痛み(1994)』が併映された。
肉骨茶(バクテー)を題材した『家族のレシピ』に通じるローカルフードへのこだわりについて、クー監督は「シンガポールは移民の国。さまざまな文化が混ざり合っており、特に“食”にはシンガポールらしさがある」と解説。またシンガポールでは、日本食の人気が高いといい「食材を空輸するので、価格は高いです。だから、シンガポール人は日本に来て、1週間食い倒れるのが夢なんです」と話していた。
自身も日本食の大ファンで「日本のチャーシューは、口の中でとろけますね。しゃぶしゃぶに、カレーライスやカツ丼。温泉卵も大好きですし、懐石料理は美の極致だと思います」と声を弾ませた。
最新作はアメリカのケーブルテレビ放送局HBO系列・HBOアジアが制作するオムニバスドラマ『folklore』。民間伝承をテーマにした6つのホラーストーリー集に、シンガポール代表として参加する。アジア6カ国の日本代表として『家族のレシピ』に主演した斎藤が、“畳のしみ”にまつわるホラー『TATAMI』で、世界監督デビューを飾っており、「斎藤さんは監督としても素晴らしい。今年の東京国際映画祭で上映される予定なので、お楽しみに」とアピールしていた。
特集上映「東南アジア映画の巨匠たち」は、7月10日まで有楽町スバル座で開催。