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2019.11.06 [イベントレポート]
「それが悪者でも複雑なキャラに興味があって、悪者を捕まえにくる警官にはまったく興味を持てないのです。」11/4(月・祝):Q&A『ジャスト 6.5』

ジャスト 6.5

©2019 TIFF 11/2の記者会見に登壇したサイード・ルスタイ監督(左)、ナヴィド・モハマドザデーさん(右)

 
11/4(月・祝)コンペティション『ジャスト 6.5』の上映後、Q&Aが行われ、サイード・ルスタイ監督、ナヴィド・モハマドザデーさん(俳優)が登壇しました。
⇒作品詳細
 
矢田部吉彦PD(以下:矢田部PD):サイード・ルスタイ監督、ナヴィド・モハマドザデーさんからご挨拶の言葉をいただけたらと思います。
 
サイード・ルスタイ監督(以下:監督):皆さんこんばんは。自分の作品をエンジョイできますようにお祈りしていました。
 
ナヴィド・モハマドザデーさん(以下:ナヴィド):こんばんは。この美しい日本、礼儀正しい美しい日本の皆さんに出会えて本当に嬉しいです。2,3日前から楽しんでいて、日本に来るという夢が叶いましてとても嬉しいです。
 
Q:日本の観客にとってすごく映画の中に入り込めたなと思うんですけど、日本を絡ませてきたということにどういう意図があったのかなということをお聞きしたいです。
 
監督:一番最初にこの脚本を書いた時、レザ・モラディというキャラクターが登場していたんですね。彼が日本から帰ってきて、日本に興味を持っていて、日本と仕事をしていまして、ヤクザの話もするパーソナルなキャラクターもいたんですけど、それは一番最初のお話なので、次はキャラクター自体がなくなったんです。役者の顔がとても日本人ぽかったんです。
 
Q:監督にお伺いします。爆破シーンの後にカラスが鳴いたようですが、あれは本物ですか。
 
監督:あれは後から足した音です。それと爆発するシーンでは、後でCGで直した部分もあります。
 
Q:ナヴィドさん、どんなシーンが一番大変だったかなどお聞かせいただけますでしょうか。
 
ナヴィド:圧迫感の話をすると皆で大勢で一つの大きな部屋に入ってしまって場所がないからトイレで電話で話をしていて、そこで自分の元の恋人が自分の名前を出してしまったとか、何かを見つけてしまったとか、それですごいイライラしてきて、ホースで皆で水をかぶるシーンがあるんですけれども、そのシーンは気持ち的に本当に圧迫感を感じて苦しかったんですね。それでもう一つはフィジカル的に圧迫感を感じたのは監獄でどんどんどんどん人が入ってきて、押された時というのは圧迫感を感じてとても苦しかったです。エキストラとして入っている方は素人なのであまり自分自身で動きをコントロールすることができないので監督がOKを出していても、多くの人がじっとカメラを見ているとかそういう場面がありましたね。仕方なくそのシーンをもう一度となって、また同じ気持ちでやらないといけないのですが、そこでまたエキストラが失敗してしまうということがあって、何度も何度も同じシーンを撮り直すことがありました。
 
Q:収容所に人が収監された場面で、どうしても服を脱がない人達が女性だから脱がないという人たちがいたと思うのですが、それらの人は、私はトランスジェンダー男性だと思って観ていたのですが、正しいでしょうか。収容所の劣悪な環境は現実を反映しているのかという意見をお聞きしたいです。
 
監督:まず女性だという人は、男性のふりをして仕事をしている人なので、それはトランスジェンダーではないのです。2つ目の質問ですが、ご覧になっていただいた映画はドキュメンタリーではありません。私は現実的な映画をいつも撮りたいと思っています。できるだけ撮っている映画は、前の作品もこの作品も現実に基づいて撮りたいと思っています。ただし、これは映画なんですね。自分にとって一番大切なのは物語とフォーマットです。フォーマットと物語だけには負けない、ドキュメンタリーには負けない、現実にも負けないような考え方を持っているので、だから手を入れてしまうんですよね。自分が大切にしている物語とフォーマットのときは、現実とちょっと離れていてもいいと自分では思っています。
 
Q:ナヴィドさんが演じられた麻薬王は、悪役なのにものすごい魅力的な役ですが、監督さんは特別な思いで麻薬王を描かれたのか、またナヴィドさんは役作りをする上でどういう思いであの役を演じられたのかということを聞きたいです。
 
監督:私は、みなさんがそうだかわかりませんが、映画を観ると悪者側のファンになってしまうのですよね。なぜなら描き方がより違うのですが、悪者をグレーで描いてしまえば、ブラックとかホワイトをはっきりさせなければ、その白黒を外して、本当の人間として描くとき、われわれが映画を観るとき、悪者を好きになってしまうときがあるんですね。私はこの麻薬王のキャラクターというのは、ひとりの人間で家族を愛している、もちろん悪いことをしてしまう、悪い道に入ってしまったのだけども、家族を愛している普通の人間だと思って描いています。私はこういうキャラクターに興味があって、悪者を捕まえにくる警官にはまったく興味を持たないような感じなんですよね。
 
ナヴィド:私は役者として、自分が演じている役を後から見て弁護できるような役をいつもやりたいと思っています。例えばもしいつかヒトラーの役をやってくださいと言われたら、もしかしたら私が演じるヒトラーは誰かがちょっと好きになってしまうかもしれないですね。
 
監督:僕は作らないけどね(笑)。
自分が最初にこの映画を撮る時にわざと皆がこの映画を観る時に“なぜ”という気持ちが動くような撮り方をしたいなと思ったんです。もう一つ音楽について説明したいんですけれども音楽家はこの音楽を作る時、誰のために作るんですかと聞かれた時に、全てのシーンは“なぜ”のために作ってくださいと頼みました。自分が映画を観るときは完全な悪者というのを見たくないんですね。映画を観るときは、背が高くてひどい顔をしていて傷だらけとか、どこかでぶたれたような跡が残っているとか、そういうのはあまり見たくないんです。自分が“なぜ”を描くときは普通の人で私たちの周りにいるかも知れない人間のことを描きたかったんですね。だから悪い部分はあるかもしれないんだけれども普通の人間です。普通の人を見たかったんです。
 
Q:麻薬はイランでも社会問題なのでしょうか。
 
監督:それは私も色々リサーチしたんですけれども、イランの社会問題ということだけではなく全世界で麻薬が増えてしまい、それを使った人たちが増えているんじゃないのかなと解釈した上でこの問題を物語にしました。
私は社会問題になってしまう題材を映画にしますが、これから作る新作も自分で疑問を持っている題材なのですが、今回の作品と前回の作品とは関係のない物語になると思います。

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