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2019.11.04 [イベントレポート]
「観客の捉え方、イマジネーションに任せたいというのが私の好きな手法です」11/2(土):Q&A『フォークロア 母の愛』

フォークロア 母の愛

©2019 TIFF 10/30のQ&Aに登壇したジョコ・アンワル監督

 
11/2(土)CROSSCUT ASIA『フォークロア・シリーズ』上映後、『母の愛』のジョコ・アンワル監督をお迎えし、Q&Aが行われました。
⇒作品詳細
 
ジョコ・アンワル監督(以下、監督):(日本語で)ありがとうございました。こんばんは、皆さま、元気ですか?
 
司会:この作品に出てくる「お化け」というか「怪物」は、インドネシアでは伝統的に昔から出てくる「お化け」だと聞きましたが、少し詳しく教えてください。
 
監督:インドネシアでは、親が子供を叱るときによく言うんですけれど、「夜出かけると、ウェウェゴンベルに連れていかれるよ」と私も自分の母親から言われました。そういう伝統的なお化けです。インドネシアの人たちはこのお化けの存在を信じています。このお化けは、子どもが欲しかったけれど子供を産むことができずにそのまま亡くなってしまった女性のお化けで、言うことを聞かない子供や親にあまり愛されていない子供に憑りつく、そういうお化けです。ですから、自分は子供の頃、母親に愛されていないなと思うことがあって、このお化けに誘拐されてしまうのではないかと、すごく怯えたのを覚えています。
 
Q:どういうところから、この作品のアイデアは生まれましたか?
 
監督:私のホラー作品は、自分が体験したことをベースにして映画にしています。この『母の愛』もそうです。子供の頃、自分の母親は一生懸命に働いていましたが、やはり疲れて機嫌が悪くなったりすることがあり、母にぶたれたこともありました。今のインドネシアではそういうことはありませんが、当時はありました。自分の母親が病気がちで、とても心配になったり、そういう体験からストーリー、脚本が生まれてきました。
 
司会:監督は、インドネシアの「ホラー王」という称号がぴったりかと思うのですが。日本では、『悪魔の奴隷』、『禁断の扉(The Forbidden Door)』も上映されたことがあります。東京国際映画祭は何度もいらっしゃっていますね?
 
監督:私の最初の作品を上映してくれたのが東京国際映画祭でした。今回、東京国際映画祭に来るのは2回目です。個人的には東京国際映画祭は特別です。(会場に向かって)皆さんもうちょっと笑顔で、すごく悲しい顔をなさっていますね。ホラー映画ですが、悲しい物語ではなかったですよね?(会場笑)
 
Q:最新作の『Perempuan Tanah Jahanam (英題:Women from Curse Land)』は日本で公開されますか?
 
監督:プロデューサーがいくつかの国と交渉しているらしいので、もしかしたら日本で上映が叶うかもしれないですけど、まだ何も結果は聞いておりません。現在インドネシアでは公開中だそうです。
 
Q:登場人物の一人が早い段階で幽霊ではないかというヒントを散らしていたのはどうしてですか?
 
監督:そういう風に思われましたか?幽霊は、母親にこの子供は存在しないと思わせようとています。さきほど言ったウェウェというお化けは、親に愛されていない子供のみを誘拐するので、子供が存在しないということではなくて。私としては母親が子供を本当に助けることができるかどうかということを問いかけました。希望を持っている方は、母親が子供を救うことができたと思うでしょうし、その逆を思う方もいるでしょう。
観客の捉え方、イマジネーションに任せたいというのが私の好きな手法です。映画監督によっては、はっきりと簡潔に答えを出す場合もありますが、やはり想像力を膨らませていただくことが映画の良さだと思うので、私としてはそのように映画を終わらせたいなと思っています。この作品に出演した母親役と子役の役者さんは、とても素晴らしい役者さんだと思っています。この作品は、ジャカルタで6日間かけて撮影しました。皆さんはご存じかもしれませんが、今回の作品は、6ヵ国によるオムニバスという形式になっているので、お時間がありましたら他の作品も見ていただけたらと思います。
 
Q:監督の作品をずっと追いかけて観ているのですが、それぞれがどこかで繋がりがあるような気がします。『Gundala』という作品で精神病棟が出てきましたが、今回の作品でもそうしたものが出てきました。(作品間で)そのような繋がり、関連性があるのでしょうか?
 
監督:おっしゃるとおりです。私の作品は、それぞれが何らかの形で繋がっています。たとえば、同じキャラクターであったり、同じシチュエーションであったり、同じ場所でストーリーが展開したりと。そこまでしか言いません。あまり細かく言ってしまうと、調べていただく楽しみがなくなってしまいますので。
 
Q:この作品に何か共通のテーマがあったのでしょうか?屋根裏を舞台にしていますが、インドネシアでも、屋根裏の妖しさという感覚があるのでしょうか?
 
監督:インドネシアの住宅事情ですが、昔はどこの家にも屋根裏がありましたが、最近の新しい住宅にはありません。また、今回のアジア6ヵ国オムニバスで、共通のテーマがあったかというと、別にこれといったテーマはなく、民間伝承や伝説に基づいて作るということだけでした。
 
司会:最後に宣伝をさせていただきます。HBOアジアが製作しましたこのフォークロアジアシリーズには、『TATAMI』、『母の愛』の他にも4つエピソードがあり、6ヵ国、6作品のオムニバスになっています。全6作品が、BS10スターチャンネルで2019年の11月10日から独占日本初放映となりますので、ぜひこちらもチェックしてください。
 
監督:(日本語で)映画を好きになるように、よろしくお願いいたします。

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