ビクター・ヴー監督
第32回東京国際映画祭の「CROSSCUT ASIA #06 ファンタスティック!東南アジア」で、フィリピン映画『
死を忘れた男』が11月3日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、ビクター・ヴー監督が観客とのQ&Aに応じた。
輪廻転生をテーマにしたサスペンスホラー。悪夢にうなされているアンは、何かに導かれるように謎の洞窟にたどり着く。そこで彼女は、黒魔術の不老不死の力で3世紀以上も生き続けている男フンに出会う。
生まれも育ちもアメリカだが、12年前に映画製作のためにベトナムに戻り、現在はホーチミンで活動しているというヴー監督。「超常現象やホラーに興味がありました。ベトナムではスピリチュアルなものが日常生活と密着していますので、生きること、死について心を惹かれていました。主人公が死に直面し、不死身になる、自然に反することをするとどういうことになるのかということに興味があったのです」と今作のテーマを説明する。
世界最大規模と言われる、ベトナム中部に位置するソンドン洞窟で撮影が行われた。「撮影のテクニックの点ではこれまででいちばん難しかったです。山に登り、水の中を泳いで現場に片道1時間半かけていきました。12日間の撮影で、私は5キロやせ、アシスタントは11キロもやせました。これはソンドン洞窟で撮られた初めての映画です。入り口付近で撮影しましたが、もっと奥に入るには1週間ほどかかるようです」と大自然を舞台とした撮影の苦労を明かす。
ソンドン洞窟以外にも、ベトナム各地の見事な風景や歴史的建造物が物語の一部として映し出される。「場所は登場人物の一人のように思っています。登場人物がどこにいるかで見る人の受け取り方が変わります。今作のロケハンに1年半かかりました。圧倒されるような場所に沢山出合いましたが、泣く泣く撮影をあきらめる場所も。主人公の心理が変化していく中で、場所も変化していきます。静かな愛を見つける場所は静かな海辺など、再生した感情を出したかったのです。とりわけ洞窟は、洞窟から出て生まれ、また入って死ぬという、人間の原始の状態を表していると感じたので、最初と最後の場面に選びました」とロケーションへのこだわりを語った。
第32回東京国際映画祭は、11月5日まで開催。