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2019.11.01 [イベントレポート]
「監督が俳優を信頼してくださっていることが伝わる現場でした。」10/29(火):Q&A『喜劇 愛妻物語』

喜劇愛妻物語

©2019 TIFF

 
10/29(火)コンペティション『喜劇 愛妻物語』上映後、足立 紳監督、濱田 岳さん(俳優・右)、水川あさみさん(女優・左)をお迎えし、Q&Aが行われました。
作品詳細
 
足立 紳監督(以下・監督):映画を作って、生の反応を感じながらお客様と一緒に見られる瞬間というのは、映画を作っているものとして最高の時間を過ごさせていただきました。本当に幸せでした。
 
矢田部PD(司会):濱田さん、水川さんにも、映画をご覧になったご感想をそれぞれお伺いしたいと思います。
 

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©2019 TIFF

 
濱田 岳:一体どの面下げて皆さんの前に立てばいいのか…という。でも笑っていいただいて本当に嬉しかったです。ありがとうございます。
 
矢田部PD:そんなことはないと思います。水川さん、いかがでしょうか?
 
水川あさみ:お客様と一緒に観させていただけることがとても嬉しかったです。「あ、こういうところで笑うんだ」とか、「あ、ここは笑わないんだ」とか、意外な発見があったりして、とても嬉しかったですし、楽しかったです。
 
矢田部PD:お二人のやり取りが見どころだと思いますが、どのように二人の掛け合いを準備されましたか。リハーサルを沢山やられたのか、それともリハーサルを少なくして本番で盛り上げていくのか、監督と役者お二人にお聞きしたいです。
 
監督:リハーサル自体はそんなに多くはやっていませんが、水川さんがブチ切れて濱田さんがギャーっとするシーンのリハーサルはもちろんやりました。全体としては、そんなに多くはやりませんでした。やはり僕はシナリオライターですので、俳優さんに台本が渡る前に言いづらいセリフを徹底的に確認し、よどみなく流れるまで自分の中でできる限りブラッシュアップしました。実際には、妻を相手に家で動きながら何度もやってみて、それをセリフに起こしていった感じなので、お渡しする時には、このお二人なら大丈夫だろうという確信を持って台本をお渡ししました。
 
矢田部PD:濱田さんと水川さんは夫婦関係を構築する上で、何か二人で特別に工夫されたことは何かありましたか?
 
濱田岳:特に何かアクションをしたかというと、していないと思います。テストを何度か繰り返しますが、僕らは「本番!」と言われたタイミングで一番ピークになるようにしています。テストは本番の力よりやや抑えめで、本番になったら、「えー、そんな言う?そんな顔になるの?」ということがよくあったので、おかげで僕も自然とニヤニヤすることができました。本当にたまたま、僕の名前が先頭になっていますが、これはほとんど水川さんの作品です。
 
水川あさみ:セリフといいますか、脚本が素晴らしいです。それに付け加えて、監督が俳優を信頼してくださっていることがとても伝わる現場でした。普段の私たちの動きや言葉などを付け加え、こういう動きをして欲しい、こういう風に言って欲しいなど、役に混ぜ込んでいって作り上げていったという感じはすごくします。
 
矢田部PD:会場の皆さんから質問をお受けしたいと思います。
 
Q:あきちゃんというキャラクターについてですが、誰かモデルになったお子さんがいらっしゃったのでしょうか。そして、両親の在り方がリアルだったのですが、あきちゃんとの関係性を構築するにあたり、役者のお二人はどのようなご関係を作られたのかをお聞きしたいです。
 
監督:自分の娘がほとんどモデルになっているとは思います。僕と妻のやり取りを娘はどのように聞いているのか。聞かせたくないと思いながらも止まらなくなってしまう。子供に良くないと思いながらもそういう姿を見せてしまっている。この映画では、車の中で奥さんがブチ切れて夫を罵りまくるシーンで、後部座席にいる娘が「酔った」って言い出しますが、ああいうのも子供なりのささやかな抵抗だと思います。やはり子供の前であんなに激しい喧嘩をするのは、あまり良くないとは思いますが、それをみんなわかっているのに、なかなか止められないというのは大人の幼稚な部分です。大人と子供、言い方が違うだけで、同じ人間だと思います。大人になればなるほど、自分が精神的に変わっていないということがわかるので、実は大人と子供の差はほとんどないと思います。自分の娘がモデルになっていますし、ひどい言葉の中でも子供はたくましく生きていかなきゃいけないぞという、自分としては子供へのメッセージでもあるつもりです。
 
濱田 岳:(新津)ちせちゃんは9歳です。設定よりも年長の子で、僕らが頼んだわけでもなく、自然と「ママ、パパ」と自分から呼んで接してきてくれました。それはおそらく彼女の俳優としての役へのアプローチ方法だったかもしれませんが、そのおかげで、やはりそう言われるとその気になっちゃうのが悲しいところです。彼女のおかげで夫婦の気分にさせてもらいました。彼女なりに台本への理解が深いなと思いました。ですから、罵り合いというのも格好悪いかもしれないですけど、彼女の俳優としての力に甘えてやっていた部分もあります。
 
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©2019 TIFF

 
水川あさみ:岳くんが話してくれたとおりです。本当に彼女自身が子供大人に関係なく、一人の役者としてそこに立ってらっしゃる。監督も私たちと同じように演出をつけていらっしゃり、彼女がいてくれて私たちも親になれた感じがすごくします。
 
矢田部PD:映画の中でも現場の中でも子はかすがいだったっていうことですね。
 
水川あさみ:はい。その通りです。
 
Q:お二人をキャスティングされた理由を教えていただけますか?
 
監督:旦那の役を演じていていただく方は、どこか憎めない部分を持った方、最初から濱田さんが浮かんでいてお願いしました。そして水川さんに関しても、水川さんのお芝居だけではなくバラエティーに出ている時の雰囲気が好きで、この奥さんをやってもらったらはまるだろうという確信がありました。そういう意味では二人とも自分の中に確信があってお願いしました。
 
矢田部PD:監督の奥様は、旦那が濱田 岳さんで、自分が水川あさみさんだということをお知りになって何かおっしゃっていましたか?
 
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©2019 TIFF

 
監督:僕は何でもかんでも妻に相談するタイプで、台本作りの時からそうです。キャスティングの時も一緒に「誰々がいい?」と話し合っていました。私の妻の母親が元々この小説をこっそり読んでいて、「これ、濱田くんにやってもらったらいいじゃない」って言っていました。
 
矢田部PD:答えがさっきと違うじゃないですか。(笑)
 
監督:ただ僕自身の中にもありました。水川さんの名前を妻に言った時には、「あるよ、それ」っていう感じでした。
 
Q:キャラクターになりきってからオフになった時に、すごく怒ってから、あるいはすごく怒られた後で、どのように普段に戻られる工夫をされましたか。現実のお2人に、素に近い感じなのですか?
 
濱田 岳:(さえぎるように)違うに決まっているだろう。(場内爆笑)
 
水川あさみ:(笑いながら)違うに決まっているでしょう。
 
濱田 岳:現場でどうこうするというより、自分で読んで勉強します。このキャラクターは明日こうしようと自分なりに読んで持っていくことが、俳優業の最初のお仕事です。現場に行ってそれをやってみて、台本を読めていないとなれば監督から指示をいただいて正解に向かっていく、監督が何も言わなければ、僕の宿題はマルをもらえたのかなと思いながらやっています。ですから、僕は監督がOKさえ出してくれればいいやという俳優なので、OKをもらえればそこでいったんプツっと終わります。ただ大人のオモチャを持ってくる顔は…
 
水川あさみ:最悪だね。
 
濱田 岳:あんな不細工だとは思いませんでした。僕もびっくりしました。
 
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©2019 TIFF

 
矢田部PD:水川さん、あれだけ怒った後に、感情を鎮めるのは大変だったでしょうか。
 
水川あさみ:そうですね。息切れは半端じゃないです。すごくまくし立てて喋っていますし、結構な怒りの熱量で話しているので、少し体が震えるというか、ガタガタする感じはありました。私も濱田さんと同じで、監督が面白いと思ってくれるか、いいと思ってくれるか、ということが一番大事なことだと思っています。でも濱田くんは現場で私が投げた球を絶対に打ち返してくれるほどのヘラヘラ度で、どういう風に言ってもどういう風にやっても受け止めてくれる安心感。それがあったので、とても信頼していて尊敬しています。ですから自然とオンとオフができたのかなと思います。
 
矢田部PD:本当に楽しいお話でしたが、残念ながらここまでということになります。では監督から最後にお言葉をいただけますでしょうか。
 
監督:今日は見ていただき本当にありがとうございました。こんな遅い時間までありがとうございます。僕の尊敬する映画監督の言葉に、「映画っていうのは物語を映すのではなく、人の姿を映すんだ」という言葉があります。僕はその言葉が非常に好きなのですが、シナリオライターとしては、その言葉と逆の仕事をしていると思います。シナリオライターという仕事は物語を作る仕事なので。ただ今回の作品は、シナリオとしては別にどうということはないと言うか、起承転結があるわけでもなく、話としては大した話ではありません。ただ人の姿を映すということを自分のテーマにしていて、それをドキュメンタリーのようにするのではなく、きちんとした台本があった上で、人としての姿がしっかり映るようにしたいなっていう思いがありました。お二人の力のおかげで僕としては非常に満足いくものになったと思っているので、出来るだけ多くにの人に見ていただきたいと思います。本当にありがとうございました。

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