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2019.10.30 [イベントレポート]
齊藤 工、初のホラー監督作上映に感慨無量 台風19号で被災したロケ地に思い寄せる
フォークロア
©2019 TIFF

  第32回東京国際映画祭の「CROSSCUT ASIA #06 ファンタスティック!東南アジア」で、エリック・クーが製作総指揮をとったHBOアジア製作のオムニバスホラー『フォークロア』シリーズの2作品が10月30日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、日本編『TATAMI』の齊藤 工監督、北村一輝とインドネシア編『母の愛』のジョコ・アンワル監督が観客とのQ&Aに応じた。

「フォークロア」は、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、シンガポール、 タイの6か国を舞台にしたホラーアンソロジー。日本編は齊藤が監督として初のホラー作品に挑戦。父の葬儀に帰郷した男が、家族の秘められた過去を知る…という物語。

齊藤監督は「20年前にこの業界に入り、北村さんの撮影現場を見学したのが最初でした。北村さんを主演として映画を作り、この場に来られ、またジョコ・アンワルさんと並べることを誇りに思います」と感無量の面持ちで挨拶。そして、俳優としての主演作『家族のレシピ』のエリック・クー監督から声をかけられ、「アジア予選のようなつくりに興味を持った。フォークロアということでメイドインジャパンの伝承として、畳を思いついた」と製作のきっかけとモチーフについて明かした。

北村は「映画に関しては脚本の魅力や世界観、監督が何を表現したいのか、作品の魅力を伝える使者」と、自身の俳優哲学を述べ、「(今作では)耳が聞こえず、主人公目線で撮られているので、(観客に)主人公を通して作品を観ていただくポジションであるべきだと思い、どこか客観視した役作りでした。どのようにカメラに収まっていればよいか、監督と話をしながらリアクションは最小限に心がけた」と役作りについて説明。

齊藤監督の現場は「彼の性格のようにさわやかな風のように流れている」そうで、「うれしかったのは、どう脚本を読み込むか、どういう風に見せるか準備に時間をかけてくださった。ディスカッションしながらスムーズに進んだので、たまに何か起こって欲しいような気もしましたが、俳優を尊重し、ものづくりとしてちゃんと話をしながら作っていけた」と齊藤監督の心遣い溢れる撮影を振り返った。

『TATAMI』は御殿場で撮影を行ったが、先の台風19号で大きな被害を受けた。齊藤監督は「御殿場でなければ作れなかった。一日も早い復旧を望んでいます」と被災地への思いを語った。また、アジア・太平洋地域16か国の中から優れたコンテンツを選出するAsian Academy Creative Awardsで、本作から主演男優賞(北村)、主演女優賞(神野三鈴)、撮影賞(早坂伸)に選出されたことも報告した。

インドネシアのホラー王として知られるジョコ監督は今回の『母の愛』について、「インドネシアには大きな胸をもち、親に愛されない子どもを誘拐して胸の裏に隠すという女のお化けがいます。子供のころ、早く家に帰らないとそのお化けにさらわれると母に言われたものです。ですから、今作では僕の母親がモデルです。厳しい母親だったけれど、とても愛してくれました。そして男の子は僕がモデルです」と作品を解説した。

第32回東京国際映画祭は、11月5日まで開催。「フォークロア」は、11月からスター・チャンネルのサービスで放送、配信される。
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