登壇したチャン・ツィイー
第32回東京国際映画祭のコンペティション部門で審査委員長を務めるチャン・ツィイーの女優生活20周年を記念し、『
初恋のきた道』(1998)の特別上映が10月29日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われ、ツィイーが上映後のQ&Aに出席した。
本作は巨匠チャン・イーモウ監督がメガホンをとり、父の訃報を受けて帰宅した息子が、両親の恋物語を回想する。かつて都会からやってきた若い教師に恋をし、その思いを必死に伝えようとした少女をツィイーが演じたラブストーリー。ツィイーにとっては映画デビュー作ということもあり、思い入れの強い作品だ。
8歳の頃から舞踏を始め、11歳で北京舞踊大学付属中学校に合格。北京の中央戯劇学院在学中、イーモウ監督に見出された。
Q&A前にはイーモウ監督からのビデオメッセージが流された。「長年の努力と勤勉さと才能は、君の優秀さを示すもの。映画を愛しているからこそ、素晴らしいキャラクターを演じられる。女優生活20周年おめでとう」。恩師からの愛情あふれるコメントを聞いたツィイーは、「私がここまで来られたのは良き先生、良き友人に支えられてきたからこそ。演技が良く分からないこともあったが、イーモウ監督をはじめアン・リー監督、ウォン・カーウァイ監督らたくさんの人々に教えてもらえたことはラッキーだった。感謝している」と笑顔を見せた。
ツィイーは女優として活動20周年を迎え、プライベートでは第2子を妊娠中。これまでのキャリアについて「映画のおかげで私のこれまでの仕事が記録されていることは本当にラッキーなこと。20年後の今日、20年前の作品を見ることが出来たが、さらに20年後の今日も何らかの作品を見ることができるのではないか。私は家族を持ったが、娘が大人になった時にお母さんの若いころの姿や仕事について知ることができる。それは本当に幸せだ」と振り返った。
観客からの質問に丁寧に応じたツィイーは、これまで演じた役で一番印象に残っている役を聞かれると「色々な役をしてきたが、個人的には生命力に満ちた役柄が好き。またどこか悲しさを背負った役も心惹かれる」と答えた。さらに「初恋のきた道」の中でお気に入りのシーンに関しては、「撮影中はひとりの人間として生きていたという実感を持っていた。この映画が持つ意義は、当時19歳だった私の若々しさ、美しさ、そして自然体な姿が記録されていること。今の私には演じられない。この作品から、年をどんなに重ねても演技は技巧に頼りすぎず、自然体で自分をさらけ出すことが大切だということを学んだ」と演技に対しての思いを力強く語った。
第32回東京国際映画祭は、11月5日まで開催。