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第32回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品されたイタリア映画『
ネヴィア』のヌンツィア・ステファノ監督と主演のビルジニア・アピチェラが10月29日、会場となる東京・六本木ヒルズで公式会見に臨んだ。
本作は、伊ナポリを舞台に、大人の女性へと変貌を遂げようとしている少女ネヴィアの心の葛藤を描いたヒューマンドラマ。主演のビルジニアは、本作が映画初出演となった。
18歳の誕生日を目前に、格差の存在が顕著なナポリの郊外に、幼い妹エンツァと叔母ルチア、祖母ナナとともに違法な仕事でその日暮らしの生活をおくるネヴィア。男性主体の社会の中で、生きづらさや将来の希望を見出せずに悶々とした日々を送っていたある日、町にサーカスがやってきたことで人生が大きく変わりはじめる物語だ。
ネヴィアの心のひだを演じきった主演のビルジニア。役作りについて「ネヴィアは、自分のいる窮屈な環境から出ていかなければいけない、そういう女の子。私自身の経験も照らし合わせて、この役の人物像の中に真実を盛り込むことができたと思います」と振り返る。
ステファノ監督も、ビルジニアの才能に太鼓判を押す。「撮影前は、3カ月間の長いキャスティングをしました。プロの俳優さんにもたくさん会ったし、少年院にもキャスティングに行きました。最終的に私がビルジニアを選んだのには、彼女に私と同じような性格と、同じような強さを感じたからでした」。
脚本も自ら手がけたというステファノ監督は、脚本を書くにあたっての苦労話にも及んだ。「この脚本は、ある意味、教養小説ということができると思います。私も自己分析することになったり、子どもの頃の思い出をたどったり、産みの苦しみがありました。この映画に出てくるセリフはどれも本物。どれも自分がこれまでの人生の中で聞いたことのある言葉なのです。登場人物たちにしても、本当に身近にいた人たちのことを描いています」
その上で、「やはりこの映画の中で一番大事なのは、少年期から大人になる女性の気持ちを表すというテーマでした。世界では今でもいろんなタブーがありますし、男性が主体の社会がありますし、そういったところから抜け出さなければいけないという女性の気持ちを描きたいということが、今回の非常に重要なテーマでした」と語った。
映画の中に出てくる、ネヴィアが鼻にピエロの赤い化粧をするシーンがあるが、「あのシーンは、フェリーニの『道』へのオマージュ」だという。
第32回東京国際映画祭は、11月5日まで開催。