10/30(水) ワールド・フォーカス Powered by Aniplex Inc.『チェリー・レイン7番地』上映後、ヨン・ファン監督をお迎えし、Q&Aが行われました。
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ヨン・ファン監督(以下・監督):素晴らしい観客の皆さんにまず感謝したいとおもいます。ありがとうございます。
矢田部PD(司会):ヨン・ファン監督、とろけるような美しいこの作品も東京に持ってきてくださって本当に感謝いたします。ありがとうございます。
監督:まず東京国際映画祭にこの作品を招聘してくださいまして感謝したいと思います。ありがとうございます。そしてまたこの部門のスポンサーをされているAniplexにも感謝いたします。
今日このような素晴らしい劇場の大きなスクリーンで作品を観られたことを感謝しています。
実は、私が東京国際映画に参加したのは今回で2回目になります。18年前、宮沢りえさん、ジョイ・ウォンさんが出演された作品『華の愛 遊園驚夢』で参りました。東京国際映画祭は18年ぶりになります。
矢田部PD:ありがとうございます。そして監督ベネチア映画祭脚本賞受賞おめでとうございます。
まず基本的なことをお伺いしたいのですが、1960年代を舞台にした作品ということでどのくらい監督の自伝的な要素が含まれているのでしょうか。またそれをなぜアニメーションで描こうと思ったのでしょうか。
監督:時代設定は、1967年の香港を舞台にしております。その時代はデモもあり、反政府運動もありました。1967年時点で私は20歳で、主役の男性よりは少し若いという年齢でした。本作は半自伝的なものでありながら、しかし母親や娘、隣人や猫に至るまで全て自分を投影しています。自分を精神分裂というか心理的なものも含めてスリラー的な要素もあります。1967年は、私にとって非常に大事な年でした。20歳ということもありますが、実は1964年に台湾から香港に渡った年でした。その当時の、台湾は戒厳令が敷かれていたので、香港に行った時に自由を感じました。海の匂いそうですし、町も活気に溢れて、すごく幸せな気持ちになりました。1967年という時代を映画にしたいと思っていたのですが、この作品は作るのに7年かかりました。夢が叶った作品です。
矢田部PD:監督、これが初めてのアニメーション作品だと思いますが、なぜアニメーションにしたのでしょうか。
監督:私は普段アニメーションをあまり観ません。アニメファンでもないので、アニメの作り方も知りませんでした。今回、非常に大きなチャレンジでした。どんなものをアニメファンが期待しているのかも分からなかったので、アニメファンに慣れ親しんだ作品ではないと思うんです。また、アートハウス系の映画に行くファンにとっても、あまりアニメーションは観ないと思いますから、彼らにとって慣れ親しんだものではないと思います。そういう意味では非常にリスクの高いものに挑戦しました。ですが、私はやったことのないことに挑戦することが非常に好きです。
写真よりも絵画の方が、より人の想像力を掻き立てると思います。想像力を掻き立てることによって時代を越えていく、タイムレスになると思います。アニメーションが唯一、私が伝えたかったメッセージを届ける手段だと思いました。悲しみや孤独感も表現していますが、不思議なことに今までの私の作品と違って、この作品はハッピーエンドです。他の作品では大体恋人たちは別れたり、誰か死んだりしますが、この作品は誰も死なない作品です。
矢田部PD:監督からバックグラウンドをお話しいただきました。では質問に参りたいと思います。
Q:おそらく技術的な面でも大変な面があったと思いますが、あえてゆっくりとした動きや背景にこだわった理由を教えてください。
監督:ゆったりしたペースはありあますが、決してゆったりした映画とは思っていません。
『アベンジャーズ』のようなスピーディーな映画とは全く違います。言葉をしっかりと聞いて欲しいし、読んで欲しいものでもあります。ゆっくりとしていると感じたかもしれないですが、無駄なものはないと思っています。やはり時代というものも関係していて、1967年は人々もゆっくりしていました。心もそうですし、非常にゆったりとエレガントな動きもありました。
Q:製作するにあたり、3Dのものを2D的なものに戻すような感じで表現されたというお話をお聞きしましたが、なぜそういう風な形にされたのか教えてください。
監督:実は3Dのものがあまり好きじゃないんです。キャラクターが全部似てしまうということが理由なのですが、2Dですと繊細な絵で描くことができるんです。2Dですと想像力を掻き立てるもの、3Dですとそこまで想像量を使わなくていいということがあります。この作品に関しては非常に微妙な動きがあったり、例えば目を瞬きするなど、動き全体がすごく繊細なものだったんですね。それをアニメーターたちが3Dでまずキャラクターを作り上げて、正確な動きを作って、その上で2Dに直して絵で描いていったんです。非常に想像力を引き立てるものになったと思います。日本と言いますと、アニメーションに関しては世界最高だと私は思います。私の初めてのアニメーションが日本で上映されたということはとても嬉しく思います。ありがとうございます。