[映画.com ニュース]第18回東京フィルメックスのコンペティション部門で最優秀賞に輝いた『見えるもの、見えざるもの』が7月5日、東京・有楽町スバル座で開催中の特集「東南アジア映画の巨匠たち」で上映され、メガホンをとったインドネシアのカミラ・アンディニ監督、東京国際映画祭の石坂健治プログラミング・ディレクターがトークショーに出席した。
脳障害で寝たきりの弟を看病する生活の中で、真夜中に心を解放する10歳の少女の姿を、現実と幻想の入り混じった描写でとらえる本作。アンディニ監督が2017年に撮影した長編2作目で、舞台版も製作された。子どもたちによる幻想的な踊りが印象的だが、アンディニ監督は「11年にバリのダンスコミュニティで日常的にダンスを踊っている子どもたちに出会いました。深く付き合う中で、ぜひ生身の子どもたちを見てもらいたいということで、舞台版にもつながりました。映画版と同じ子どもたちに出演してもらっています」と振り返る。
さらに、子どもたちへの演出方法について問われ、アンディニ監督は「(そもそも)ダンスコミュニティでの子どもたちへの指導が非常に特別なものでした。文化保存の目的を持ち、瞑想の時間や厳しい規律もあります。重いテーマに言及しているこの作品に出演してもらうに当たって、『どう子どもたちに演じてもらうか』と考えた時に、体の動きをセリフ代わりにして伝えるという方法をとりました」と明かす。「出会った頃は7、8歳だった子どもたちも舞台版の時には13、14歳になっていたので、テーマをあまり知らせず、考えさせ過ぎずに自然な状態で動いてもらうようにしました」と、成長に合わせた配慮をしながら、子どもたちの演技やパフォーマンスと向き合ったという。
アンディニ監督自身はジャカルタ出身だが、物語はバリ島が舞台となっている。バリ島の中にはコインの表と裏のような2つの面があるといい、「表側はダイナミックでカラフルな、賑やかな面。裏側は瞑想的で白黒な、精神的な面です。私は裏側により興味があって、探求していきたいと思いました」と説明。「この作品の執筆には6年かかったんですが、リサーチの中で感じたのは“二面性”。人生には良いことも悪いこともあって、どちらか一方ということはないんですよね。そういった現実の中でどう調和を保っていくか、ということを考えました」と力強いメッセージで締めくくった。
「東南アジア映画の巨匠たち」は、7月10日まで東京・有楽町スバル座で開催。